「世界終末戦争」は十九世紀末に実際に起こったカヌードスの叛乱が元となっており、原始キリスト教的コミューンと産声をあげたばかりの共和制国家ブラジルとの戦争を描く。聖者コンセリェイロの遍歴や信者達の挿話など社会や政治を絡めて話は進んでいく。二段組み七百頁という大書であるが、読者を厭きさせることなく物語はドラマチックに展開する。争いの中で葛藤する人間の営み愛憎に塗れた人間模様が、丹念かつ臨場感たっぷりに描かれ歴史小説の面白さを堪能できる。たくさんの要素が込められた本書は、近代国家への歩みを進める中で共同体のあり方や人の生き様を考えさせられる。遠く離れた南米の歴史は決してわれわれにとって無縁のモノではない。賢者は歴史を通して学ぶという。本書を通して読者ひとりひとりが意味を見出せればいいのだろう。
本書は長年絶版状態にあった。作者の国際的評価の高まりと共に出版社が復刊を決めたとのこと。多くの人に本書が読まれる機会が出来たことを嬉しく思う。そして浩瀚な書物を読みやすく翻訳した旦氏の功績は忘れてはならない。これを機にラテンアメリカ文学が花開き、埋もれた作家・作品が世に羽ばたくことを願いたい。
本書「世界終末戦争」はリョサの渾身の作品であると共に20世紀を代表する文学として時を超え伝えられるべき書物だと思っている。
実に多くのことを考え感じさせられる本。
文学の重みが身体じゅうに伝わり心のどこまでもに響きわたる。