死体写真家、釣崎清隆氏の処女作。2000年発売。
彼が一介の映像作家から「死体写真家」に至ったいきさつ。タイのレスキュー隊や、南米の同業者(死体写真家)やエンバーマーとの出会いなど、死体を通じてならではの交流や出来事など、彼にしか書けない紀行文。
ロシア、メキシコ、ブラジル、そして日本と、各国の死体事情がドライな文体で書かれている。特にバンコクの交通事情、コロンビアの治安の悪さ。その当然にして直接の結果として出来上がる無数の死体に対する思い入れと熱意には、読んでいるこちらも目を眩まされる。
釣崎氏が初めて撮影した死体はバスタブで自殺したタイのゲイだが、そのゲイにどんな事情があったにしろ、彼の死が一人の人生を大きく変えたのは間違いない。しかし彼自身は、決してそのことを知ることはないのだ。
例え誰に何の影響も与えず生きて死んだとしても、死後、自分の知らないところで誰かの運命を左右することもある。もちろん、それに注目してくれる人がいればの話だが。
本書や、あと「Burst」にも収められている、路面に転がっている女性の手首の写真は、釣崎氏の作品の中で一番のお気に入り。