私、失礼ながらこの著者を存じ上げなかったのですが、クラッシク音楽等のレビューでは結構知られている方のようです。
この本は、その著者が本を読まない方のために書かれたッブックガイドです。本を読まない方がそもそもこの本を手に取るのかどうかは甚だ疑問なわけですが、もしそういうことが起こりうると仮定すれば、この本は結構上手く出来ています。
たとえば、どんなに面白くたって、たとえば「カラマーゾフの兄弟」なんかを人から勧められると、読書好きの私だってかなりげんなりします。その点、この本の中で取り上げる作品はどれも短編ばかりで、しかも一度は聞いた事のある作家の作品ばかりです。
その上、川端康成を評して「だじゃれ好きのエロじじい」と言ってみたり、谷崎潤一郎をつかまえて「変態」とのたまったり、三島由紀夫をけちょんけちょんにけなしたり、もうやりたい放題です。が、そこにはやはり日本文学に対する深い愛情が見え隠れして、この本を読んでも日本文学に興味を持たない人がいれば、とても残念ですがもうその人は一生日本文学とは縁が無いんじゃないかと思います。
また、岡本かの子に始まり岡本かの子に終わるいうのも、非常に小憎らしい演出です。なぜなら、近現代の日本人作家の中で、彼女ほどその作品と人物像がともに様々な意味で度を越えている人はいないでしょうから。
私は、日本文学が世界最高とはけっして思いませんが、それでも日本人に生れて日本文学に手を出さないのは、人生における大きな楽しみをみすみす見逃していうように思えてなりません。
ですから、この本によって一人でも多くの方が日本文学に触れる事を願ってやみません。
しかし、先に述べたとおり、そもそも本を読まない方がこの本を手に取るということが起りうるのか、私にとって甚だ疑問です。