下川さんの体を張った旅に敬意を払い、地図を開きつつ日程を確認しながら丁寧に読んでみた。
ユーラシアの東端から西端まで毎日それぞれ山あり谷ありなのだが、ウルムチ滞在あたりから話は盛り上がってくる。
入国と出国を繰り返し、緊張の場面を何度も切り抜けてカスピ海西側のアルテジアンまで進んだが、ここからの展開が白眉だ。
いきなり先行貨物列車の爆破テロ、不審な外国人の出国拒否? 賄賂の要求? ついに片道旅行は頓挫し泣く泣く逆戻り。 ビザが切れて途方に暮れ、そこに現れた救世主。怪しい宿に潜伏後、小さなプロペラ機でようやくバクーへ。
一歩間違えれば大変な事になる。命がけだ。それでも旅を貫徹したのは責任感の為せる業か。そしてイタリアまで来ると「旅が終わったような気がした」という。
下川さんの列車とコースへのこだわり、観察眼や冒険心、歴史話の挿入と思いやり。
2万キロ、最長片道、地球の果てへ、歴史紀行。そうだ、あのなつかしい宮脇俊三さんのエッセンスだ。
これは旅行を超えた冒険の本でもある。今、あたたかい紅茶を飲みながらこのスリルを味わえることに感謝している。