聾(ろう)学校創始者のフランス人神父ド・レペの伝記部分(第二部)と、ろう教育の沿革と将来についての研究との部分(はじめに、第一部、第三部、あとがき)とで構成されています。何故”はじめに”、と”あとがき”を入れてあるかは説明します。
はじめに(4p):わずか4pには、多くの示唆に富む命題が書かれています。聾(ろう:聴力が弱い)と唖(あ:口が利けない)ことは別であること、聾教育の変遷、手話の偏見、口話の偏重、障害者差別、宗教的忌みとしての聾唖観、ド・レペとその時代パリコミューン、フランス革命と多岐にわたり、感嘆するほど極簡潔に表記されています。
第一部ろう教育と歴史的経緯(24p):研究論文にあたります。手話は”言語”であると言います。
第二部ド・レペとその時代(112p):伝記の部分です。人となりのエピソードが絡むと、出来事に深みのある印象を与えてくれます。
第三部ド・レペ以後のろう教育(30p):ド・レペが亡くなった以降、手話によるコミュニケーション手段が優れているにも係らず、口話の教育手法の方が大勢を占めます。その理由を追います。今日、手話は再評価され、手話を主軸に口話と指話とを並走させながら聾者の可能性を追求します。
あとがき(4p):時代は社会の一国家一言語主義による口話法が全盛になったため、100年にわたり手話は埋もれてしまったと、悔述します。そして、手話は「言語」として可能性が研究されるようになったと、希望をよせて最後を締めくくります。
いずれも”4p”しかない「はじめに」と「あとがき」がこのように濃い内容の著作物を眼にすることは稀有です。
普通の人ならド・レペという個人を知らないでしょうし、興味も持たないでしょうから、聾(ろう)教育の沿革を知りたいだけなら、第二部の伝記部分(主題なのですですが)を後に読むといいです。
手話が”言語”であると、所々で述べるのが印象的です。深くは触れませんが、手話に対する認識を改めれます。