冷静を失い対立を深める両巨頭が招いた一触即発の危機を回避すべく立ち上がるソラナー勇士二人の決死の活躍と人類なき地球に残された一握りの人々の苦闘のドラマを描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第383巻。本巻の執筆者はお馴染みベテランの味フォルツとマールです。アトランはラール人に偽装NEI惑星の真相を教えたのがローダンの仕業だと独り決めし、180隻のNEI艦隊で《ソル》を包囲する。アトランの激怒する姿に幾ら道理を説いても無駄と判断したローダンは強行突破に踏み切ろうと決意し《ソル》に最悪の危機が迫る。
『権力闘争』ウィリアム・フォルツ著:本編では地球を知らず《ソル》船内で生まれた自称ソラナーの勇士、再登場の代表者ヘルムートとテレパス他未知の能力を持つミュータント猫男ブジョの二人が決死の覚悟で出撃し大活躍します。一万歳を超える不死者に対し十七歳の若者が必死の思いで説得する姿が感動的です。『世界支配者』クルト・マール著:人類なき地球の僅かな生存者の会社重役・技師・学生と元K=2ロボット・アウグストゥスの一行は旧式のホバークラフトに乗って一路テラニア・シティを目指す。本編では自分を神に選ばれた者と信じるマッド・サイエンティストと従順な謎の女助手が登場し、三人と一体との一進一退の対決の行方が最大の焦点です。また僅か一頁のみに登場する‘具象’クレルマクが今後物語にどう絡むのか予断を許さず次巻がとても楽しみです。
本巻の翻訳者、増田久美子氏のあとがきは猫男ブジョへの母性愛から天才少年の映画へ話題を移し最後に我が身を省みて自虐ギャグで締める少し哀感も漂う話です。今回はアトランの権力欲という意外な負の一面を知らされた印象が非常に強いですが、人間には悪い部分もあって当然で全てをさらけ出したのは却って良かったと思います。故郷銀河で敗れた二人のゼロからの新たなスタートに期待しましょう。