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それぞれ趣向の異なる怪談集。
「廃宅」はいかにもホフマンらしい、難解な面がある。
「ラザルス」など、怪談と言うよりは哲学小説とでもいうべき雰囲気。
「怪談」だからといって恐怖譚とは限らない。
「幽霊の移転」など、山本周五郎の滑稽もののような味わいがある。
解説は種村季弘で、軽妙な書きぶりながら要所を突いている。
電灯の発明によって、ゴシック小説の夜と闇の世界が崩!れたというのは、実際そうだったのだろう。
闇が消えたとき、新たな道具立てとして鉄道などが取り入れられた結果が、上巻の「信号手」なのではないか。
アンドレーフの「ラザルス」は新約聖書でキリストが蘇らせた聖人「ラザロ」を題材にした作品だ。
一度,死者の国を見た男が蘇ったとして,果たしてそれは幸福といえるのか。
といった内容だが,聖書を知らない日本人には「ラザルス」はただの「ラザルス」であって,その有難さも神聖さもわからない。なので,有難さも神聖さもない「ラザルス」は,最初から単に不気味なのである。そうはいっても,これを選んできた岡本綺堂はさすが。聖書だのラザロだのなんか知らなくてもやっぱり面白いことには変わりない。
僕のお気に入りは「鏡中の美女」。
この作品は,他の傑作選などにもよく載っているが,岡本綺堂の訳が一番いいと思う。タイトルの訳も「鏡中影」「魔法の鏡」などいろいろあるが,原題が『The Lady in the Mirror』なので,このタイトルが一番正しくてきれいだ。「美」は余計だけど。
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