第二巻はまずインド・ヨーロッパ諸民族の共通する宗教観念、特に社会階層の三区分と対応する神々の特性が、サンスクリット、ラテン語、イラン語、古ゲルマン語といった同起源の諸言語に存在する共通点を例にとって語られる。どうしても日本語のテクストの読者である多くの日本人にとって、インド・ヨーロッパ語系の諸言語の共通性というのは想像し難いし、それぞれを逐一学んで理解することは時間的にも知的にも大変厳しいので、こんな風に例示されると非常に解りやすく、便利だ。
そのあとにインドにおける宇宙論的構造や神々の発生と変化が各ヴェーダにまとまっていく様子が描かれるが、各ヴェーダで物語られた地球の起源と発展の様子が、昔読んだ物理学者のJ.Dバナール「生命の起原」で科学的に論じられていた様子と一定の相同性を示しているのには驚きだ。神々の特性と機能を記したヴェーダが儀礼の様式となり、ヴェーダの知が各ブラーフマナ書に、各ウパニシャッド書に受け継がれてその様相を変えていく様子、読む前は全く知らなかったインドの宗教思想が、曲がりなりにもイメージを描けるようになった気がする。興味が沸いてきた。
そのあとにはギリシア宗教を扱った三章、これもブルフィンチなどのある種アンチョコ的にまとめた神話本では語られない「構造」への分析と、先行する信仰を換骨奪胎していく、普遍的な宗教的知が描かれていて、新鮮だ。
続く「ザラスシュトラとイラン宗教」、これも全く知らなかったが、後世の宗教に決定的な影響を与えたアイディア、この世の終末と審判を巡る思索がここで語られている。これがキリスト教やイスラム教に影響を与えたことが予想されるが、この間では明示はされていない。
続いて「旧約聖書」上の王国形成から知恵文学、預言者たちまでの信仰の変化発展が語られる。歴史的事件を信仰のシステムに組み入れた最初の宗教、という指摘にはなるほど、と思った。
最後はギリシア宗教におけるディオニュソスの特異性と、後世への影響をほのめかして終わる。ここまでが、全三冊のうちの一冊目となる。
巻末には荒木美智雄氏による解説があって、エリアーデの生涯に就いて短く纏められている。その来歴を知ると、彼の著作がいっそう興味深くなった。
読むほどに面白いシリーズ。