これは“後悔”の物語であると、改めてそう思った。ネロを取り巻く人々、特にコゼツ旦那の、償いきれない大きな後悔の物語なのだと。そういう意味では、コゼツこそがもう一人の主人公と言えるかもしれない(他愛ない連想だが、私は「コゼツ」と聞くとどうしても「孤絶」をイメージしてしまう)。
ネロ自身は決して過去を振り返らない。生前のおじいさんを想い、時に涙ぐむことはあっても、常に現実を見つめ、辛い境遇をありのままに受け入れ、健気に“今”を生きて来た。だからこそ、素晴らしいルーベンスの絵の魅力に浸りつつ、天使に導かれ、大好きなパトラッシュと一緒に“空に続く道”を昇ってゆくことができるのだろう。幸せに包まれ、晴ればれとした笑顔で、おじいさんのいる国へゆけるのだろう――。
最後の讃美歌を聴くと、思わず涙があふれて来る。残される者の悲しみも、ネロには届かない。吹雪の中で闇に向かって「ネェロォォォォォ!!」と絶叫するアロアの声も、ネロには聞こえない。それでいいのだ。苦しみもない、思い残すこともない、ネロはこの世のしがらみから完全に解き放たれたのだ。そう思った。
全52話のテレビシリーズを90分に凝縮してあるため、小さなエピソードは当然省かれている。隣家のヌレットおばさんのことや、ネロとジョルジュ・ポール兄弟との出会い、アロアの留学と病気のこと、ネロの牛乳運びの仕事が減らされたこと、ジョルジュの出稼ぎのこと、風車の火事のあとで仕事が全くなくなってしまったことなどは、今回語られていない。しかし、私はさほど“継ぎはぎ”の感じは受けなかった。本放送当時からのファンとしては、完結版ではあっけなさを感じるだろうと思っていたが、観終わってみると、立派に一つの作品として仕上がっている。単なる“総集編”ではない編集の工夫に感心した次第である。