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最も参考になったカスタマーレビュー
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
穏健で誠実な歴史へのまなざし,
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レビュー対象商品: 世界史的考察 (ちくま学芸文庫) (文庫)
19世紀後半の時代に書かれたものでありながら、今日のわれわれにとっても示唆の多い名著が手にとりやすい形となった。
まずはヘーゲル流の歴史哲学を批判する。当然、そのあとを継ぐマルクス・レーニン主義への批判的な見解につながるものとなろう。しかし「国家」「宗教」「文化」というファクターを提案し、それらにもとづいて世界史的考察を展開する。歴史おける「危機」「幸と不幸」というテーマについて議論を推し進め、世界史及び人間性の不安定要素を指摘した。 そこには、価値判断に対して慎重な、穏健な実証主義的な姿勢が貫かれている。進歩主義の行き詰まりが認識されて久しいが、それを乗り越え、止揚する歴史へのまなざしを考える上で本書は有益であろう。
9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「歴史哲学」から「歴史認識」へ―19世紀からの警告の書,
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レビュー対象商品: 世界史的考察 (ちくま学芸文庫) (文庫)
はじめに、ヤーコブ・ブルクハルト(Jacob Burckhardt, 1818~1897)の『世界史的考察』が新たな訳出と装丁で刊行されたことを嬉しく思う。さて、ブルクハルトの歴史観の特徴として先ず挙げられるのは、近代人の持つ「冷酷な高慢」(本書)と「世界精神の理性的で、必然的な歩み」というヘーゲル的な歴史観=歴史哲学への批判であろうか。特に、彼の有名な一節に「歴史哲学は半人半馬(ケンタウロス)の怪物であり、形容の矛盾である」というのがある。これは極論的に断ずれば「歴史は一つの理念で動いてはいない」というもので、この意想は、必然的に「歴史は生産力と生産関係の矛盾により進歩する」といった左派ヘーゲリズム=マルキシズムへの否定にも繋がっていくだろう。 ブルクハルトは、歴史における「一切の体系的なものを断念」(同)し、多元性を教示する。彼は「知覚されたもの」、「歴史を横切る横断面」(同)を重視し、「過去」への愛惜も隠さない。そして、歴史を変転させるのは、「潜在力(ポテンツ)」としての「国家」「宗教」及び多義的に使用する「文化」であり、さらに「発展における新しい節」(同)としての「危機」という切り口なども私たちに提示する。何より大事な点は、ヘーゲル的な意味での“過去を現在の前段階”と見なしてはいないということで、それはたとえば、トクヴィルの思想(『旧体制と大革命』等参照)などとも通底すると考える。私たちは、過去・現在それから未来においても「変わることがないもの」に対する目配りを忘れてはならない。
8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ブルクハルトの歴史学的世界観,
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レビュー対象商品: 世界史的考察 (ちくま学芸文庫) (文庫)
マルク・ブロックやリュシアン・フェーブルもその著書で少なからず引用していた歴史学者、ヤーコプ・ブルクハルトの歴史学的世界観を著した著書。本人が執筆したのではなく、バーゼル大学での講義草稿を甥のヤーコプ・エーリがまとめたものだという。
構成は全六章、序論の後に歴史のありようを規定する国家・宗教・文化についての分析があり、次にそれら三要素の相互作用のヴァリエーションの数々、そのあとに歴史における危機・歴史における偉大さ・歴史における幸と不幸という三章が続く。本編の後には訳者の解説が続く。 読み進めていくと、内容としてはヘーゲルの「歴史哲学講義」に対する強い反駁を示していることに気づく。取り上げられている歴史上の事柄については「歴史哲学講義」とほぼ同様だが、「講義」のように執筆当時の状況を前提とした歴史法則の披瀝にはなっていないし、本人自体歴史哲学の手法には否定的だ。 その代わり、著者は西洋に関わる歴史のあり方に不易な要素として国家・宗教・文化の三区分を見出す。ここでの文化は芸術や学術に限らず産業や交易を含む広い概念で、支配者・聖職者・市民というそれぞれの担い手を持ち、それぞれ互いにほかを制限する度合いに応じてそれぞれの人々の暮らしが変わっていく様子が、歴史上の多くの地域・多くの時代を例として示される。 「歴史における危機」は、ある意味でフランス革命の批判にもなっているが、他にも十字軍や宗教改革、清教徒革命などなど、数多くの危機が図らずも明らかにした人間性や、危機自体が人々にもたらす高揚とその後の幻滅なども、あくまで冷静に列挙していく。「歴史における偉大さ」は、文化・宗教・国家に関わる人々が示す偉大さのヴァリエーションを列挙する。この著書の中では一番読みやすい章。「歴史における幸と不幸」は、歴史事象に対して理解する前に判断し、裁いたり法則化しようとする振る舞いを批判した章。 読み終えてみると、今の時点でも十分に通用する省察をたくさん含んでいると思えた。アナール学派の問題意識を触発したのではないか。また、歴史を左右する要素の三区分は、後のデュメジルの探求にヒントを与えているようにも思えるし、後世に与えた影響が大きいと思う一冊だった。
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