本書は、『地域からの世界史 第19巻 世界史への扉』(朝日新聞社、1992年)が再版されたものである。歴史的事実の羅列である「世界史」ではなく、54のエッセーからなる「世界史」である。それぞれのエッセーはだいたい3〜5頁でおさめられ、しかも読みやすい内容となっている。
本書の特徴としては、1)世界史の一体化、つまり世界を同時進行として見ること。2)個人(ヒト)だけでなく、物質(モノ)を通して歴史を見ることである(本書、8-9頁)。本書の前半では、1)を踏まえた内容が多く記されている。例えば、「世界史の同時性を求めて」(79-82頁)を挙げてみたい。
紀元前3世紀〜紀元5世紀のユーラシア大陸の東西端では、比較的同じ状況が見られた。つまり、紀元前3世紀では、東の中国では秦・漢帝国が成立し、一方の西ではローマのイタリア統合がなされた。3世紀になると後漢帝国が解体し、4世紀にはいると「五胡」と総称される異民族の侵入を受け、「十六国」があいついで建国される。ローマ帝国においては、「危機の3世紀」を迎え、4世紀末には帝国の分裂、北方からのフン族やゲルマン諸民族の流入し、5世紀にはゲルマン人による国家がつくられていくことになる(80-81頁)。この共通性について、紀元3〜4世紀に全ユーラシア大陸で平均気温が低下し、作物が不足となって農民の生活が苦しくなった。そのため、帝国の経済基盤が揺るいだことによって、より南方の好条件の地を求めて移動してきた異民族を抑制できなくなったのではとしている(81頁)。著者はその説を裏付けるデータがないとしているが(82頁)、それでもこの共通性は興味深いことである。
後半では、人物、疫病、歴史的事件や美術など様々なテーマが取り上げられているので、多くのことを知ることができるであろう。
とりわけ世界史を一通り学び、さらに次のステップへ進む人にとって本書は新たな歴史の見方や知識を提供してくれると思う。