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世界史の構造
 
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世界史の構造 [単行本]

柄谷 行人
5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

資本=ネーション=国家が世界を覆い尽くした現在、私たちはどんな未来も構想し得ないでいる。しかし本書は、世界史を交換様式の観点から根本的にとらえ直し、人類社会の秘められた次元を浮かび上がらせることで、私たちの前に未来に対する想像力と実践の領域を切り開いて見せた。『トランスクリティーク』以後十余年の思索の到達点。

内容(「BOOK」データベースより)

資本=ネーション=国家が世界を覆い尽くした現在、私たちはどんな未来も構想し得ないでいる。しかし本書は、世界史を交換様式の観点から根本的にとらえ直し、人類社会の秘められた次元を浮かび上がらせることで、私たちの前に未来に対する想像力と実践の領域を切り開いて見せた。『トランスクリティーク』以後十余年の思索の到達点。

登録情報

  • 単行本: 528ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2010/6/25)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4000236938
  • ISBN-13: 978-4000236935
  • 発売日: 2010/6/25
  • 商品の寸法: 19.2 x 13.6 x 4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
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3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By JRX
形式:単行本
ずっと「積ん読」状態で手つかずだった柄谷行人氏の「トランスクリティーク」(2001年)を氏の近著「世界史の構造」(2010年)を読んだ目で読み返しました。

この「トランスクリティーク」で深く掘り下げられたカントについての考察があって、はじめて「世界史の構造」(およびその抄論としての「世界共和国へ」)が成立し得たのだということに思い至りました。そしてこれらの著作を同時代にリアルタイムで読むことの意味を感じました。

今回「トランスクリティーク」を読んで、最も大事なポイントだと思ったことを今日ここに書きます。

それは「単独性」の視点についてです。

それは「類」に属するような「個」を置いたうえで、それらをつなぐ関係性を考察するというような思考に対する批判であり、次のような、ものの捉え方に対する批判としてあらわれる倫理のベクトルのようなものと言えます。

『この一枚の紙と言うとき、すべての紙、どの紙も一枚の紙なのである。私は相変わらずただ一般的なものを語っているだけである。(ヘーゲル「精神現象学」)』

「単独性」の視点とは、言語で定義しようとしてもその外部にこぼれ出てしまうような、あるいは、たとえ固有名をつけたとしても、そうした名称でつなぎとめることができないような、「或る一人の人物」であったり、「或る一匹の犬」であったりするもの、すなわち代替や再現が不可能なものを見据えた上で、それを大切に扱う視点です。

音楽に関係する者同士であれば、空を舞って瞬く間に消えてゆく自分の発した実音を大事に思う気持ちのようなものと言えば、わかっていただけるかもしれません。

こうした、ある意味でミクロな「単独性」の視点が、ひるがえって「普遍性」あるいは「他者」「外部」といった論理につながります。このような「単独性/普遍性」への視点が無ければ「すべての人の同意を要求する(カント)」ような普遍性を探求する精神も生じ得ないと思います。

今日ここに書いていることは、一年前(2011年3月11日)に起きた災害に結びつけたくないと感じています。

しかし同時に次のことが言えると思います。

「単独性」の視点が無ければ、亡くなられた方、傷ついた方、大切なものを喪失された方をいたわる心は持ち得ない。そして、まだこの世に生まれていない未来の人たち、あるいは大昔からこの地で生活を育んでこられた先人の方たちに対する「取り返しのつかないことをした」という気持ちは起こり得ないと。

柄谷氏が「トランスクリティーク」を執筆しはじめた90年代初頭から数えて20年以上の長きにわたる、倫理的要請に立脚した考察は、以下の一節に凝縮されていると思います。

『他者を「目的として扱う」とは、他者を自由な存在として扱うということであり、それは他者の尊厳、すなわち、代替しえない単独性を認めることである。自分が自由な存在であることが、他者を手段にしてしまうことであってはならない。すなわち、カントが普遍的な道徳法則として見出したのは、まさに自由の相互性(互酬性)なのである。』(「世界史の構造」345頁)
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73 人中、45人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
 この大冊はオリジナルな書である。世界史の構造という概念からしてそうである。先行する試みとして、マルクスの提示した社会構成体の歴史的諸段階の記述があるが、そうして著者はそれに基本的に同意しているが、肝心の社会構成体の概念が徹底的に再考されている。「生産様式」に注目することによって分類されていた様々な社会構成体を、四つの「交換様式」の複合体として分析し直すことによって、相互関係が相当組み変わってしまわざるをえないことを明示しえているのだ。全く明晰に論じられているので、大冊中に枚挙に暇がないほど記されている、こうした瞠目すべき創見は受け入れざるを得ない。
 全ての章において論述も構成も明晰であるから、むしろ最も難解なのは根底にある四つの交換様式、すなわち互酬、略取と再分配、商品交換、そしてX(アソシエーション)であるのかもしれない。事実、十年前に刊行された『トランスクリティーク』において初めてこれらの四つの交換様式が提示されたとき、戸惑いを覚えた。そうして今回も、これほどの壮大な成果の基底に在るのは、たった四つの交換様式だけであることを認めたとき、このような着想がどこからきたのかを確かめざるを得ない気持ちになった。
 岩波の定本でいうなら第二部第二章にある「3資本の欲動」にある記述が初出のようだ。そうして、そこで強調されていたのは超越論的認識という事であった。
〈スミスは、貨幣の起源を論じながら、その議論を通して交換関係の対称性を永久的な自然形態(本能)であるかのように印象付けている。それに対して、マルクスは経験的な歴史的遡行ではなく、超越論的な遡行によって、価値形態、すなわち相対的な価値形態と等価形態を見出した。それはいいかえれば、商品交換がけっして対称的な関係ではありえないということである。
 マルクスはこのあと「交換関係」という章で、商品交換の発生を歴史的に考察しているように見える。そこで彼がいうのは、それが共同体と共同体の間で始るということである。《商品交換は、共同体の終わるところで、共同体が他の共同体またはその成員と接触する点で、始るのだ。しかし物は、ひとたび共同体の対外生活において商品となれば、たちまち反作用的に共同体の対内生活でも商品となる》(『資本論』第一巻第一篇第二章、鈴木役訳)。しかし、これは歴史的というよりも超越論的な考察である。なぜなら、これはたんに太古に生じたことではなく、現在も進行していることだから。この「共同体」は、家族、部族から国家にいたるまで、様々なレベルにおいて考えられる。〉(P315〜316)

 『世界史の構造』において、様々な社会構成体は、いずれも四つの交換関係の複合体であると見究められているが、どの交換様式が支配的であるかによって決定されると結論付けられている。そうして、支配的な交換用式の変遷には必然が見出されているが、それは超越論的な認識によるものであることを忘れてはならないだろう。X(アソシエーション)が力を得てくるのは、これはフロイトの概念であるが、〈抑圧されたものの回帰〉として了解されているのだ。略取と商品交換によって徹底的に抑圧された互酬が、より高次元での形態をとって回帰してくるのがXなのであるから。同様に、最終章で提起された「贈与による世界平和」という考えも、どのような水準の認識に基づくのかが真に理解されるまでは決してリアルな提起とは見なされないだろう。
このレビューは参考になりましたか?
111 人中、67人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
 本書を眺めてがっかりした。以前に『トランスクリティーク』や『世界共和国へ』を読んで大方の検討はついていたが、予想にたがわず他人の学説のツギハギばかりである。どこに著者のオリジナリティがあるのだろうか?
 まず、世界史を見る視点をマルクスの生産様式から「交換様式」へ転換するというのは、他でもない宇野弘蔵の受け売りである。資本主義の総体を、価値実体としての生産過程からではなく価値形態=流通形態としての「交換様式」から把握することを提起したのは、いうまでもなく宇野『経済原論』の最大の成果である。そして、この狭義の「交換様式」を互酬・再分配と市場経済の対抗関係にまで拡張し、世界史をこの3者の対立として理解したのは、宇野にポランニーを接合し「広義の交換様式」を構想した玉野井芳郎であった。柄谷は、この宇野=玉野井の理論をそのまま借用したうえで、これに、意味ありげに「交換様式D」なるものを付け加える。それは、カントの目的の国であり、フロイトの抑圧された慾動であり、超越論的な統整理念としてのアソシエーションである、というわけである。
 しかしこのアソシエーションの理解そのものが少々おかしい。近年サンデルのコミュニタリアニズムが大流行しているが、サンデルによれば、アソシエーションは選好的で社会契約的な利害共同体であり、アリストテレス的な共通善に基づくコミュニティとしての共同体とは厳密に区別される。柄谷の交換様式Dは、略奪と再分配によって隠された互酬と贈与の復権であれば、アソシエーションではなくコミュニティと言うべきであろう。実際、我が国でも青木孝平などは、市場と国家への対抗を互酬的な共同体的関係性に求め、これをマルクスのコミュニタリアニズムとして評価している。コミュニタリアニズムは、カント=ロールズ的な「負荷なき自我」からなるアソシエ―ショニズムに対する批判でもある。柄谷はマッキーヴァーいらい常識的で、近年大いに注目されているアソシエーショニズムとコミュニタリアニズムとの違いさえ理解していないのではなかろうか。
 結局本書は「世界同時革命」なる大風呂敷にもかかわらず、根幹はマルクス、宇野、ポランニー、玉野井そして青木に連なる理論体系のパッチワークにすぎない。そこには体系的理論としての斬新さはまったくない。かつての栄光だけにすがる、老醜をさらした柄谷の無残な末路を見る思いがした。
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