「日本人がしたことすべてが悪だったなどという善悪二元論は、歴史の名に値しない。
歴史は、個人や国家の行動が、道徳的に正義だったか罪悪だったかを判断する場ではない。現代の国家にとってよかったか悪かったかを判断する場でもない。歴史に道徳的価値を介入させてはいけない。歴史は法廷ではないのである。(『はじめに』より引用)」
本書はタイトル通り、満州を舞台に世界史の流れの中でどのような史実が積み重なっていったかを、日本、朝鮮、中国、ロシア、モンゴル、そして満州など様々な国家、民族を登場人物にして描いた書である。
新書サイズで270ページ程度のコンパクトさながらも、上記各国の国の始まりから解説されており、また満州帝国建国に限らず各史実における各国の立場や背景が並列的に書かれており、東アジアの歴史を包括的に学べる。
一国の価値観や立場(日本含む)に偏らず、あくまで冷静に相対化されている名著と感じた。
私たちが学校で学ぶ近現代史は、捏造の事件があったり各史実においてひたすら日本の立場を貶めるものが多いが、本書は引用部の通り事実のみを書き、また善悪の判断などを押し付けてこないのが特徴的である。
読了後感じたのは、日本が満州に関わる際、行動の是非云々に関わらずその根底には必ず「国防」または「国益追求」という観点、姿勢が一貫して存在することだった。聖徳太子の時代から満州帝国崩壊後まで一貫して、である。
対して現代の日本はというと、自民党時代も民主党政権も東アジアにおける外交において国防、国益追求の観点、姿勢が見当たらない。これを回復するには時間がかかるだろうが、まずは日本人一人ひとりが史実を学びその中から日本の外交姿勢などを掬いとることから始めるのが王道ではないだろうか。
右左、また世代に関係なく多くの人に読まれてほしい書である。