著者の「世界史の構造」を一カ月かけて読んだ後だったので、本書は頭に入りやすかった。一方「トランスクリティーク」は読んでいる最中だが難しく、ちょっと読むのを中断しなくてはならないかと思っている。
本書を経て「世界史の構造」で主張する「交換様式から歴史を見る」というテーマが著者の中で深まったことは良く見て取れた。また新書で出しているだけに、出来るだけ平易に語ろうとしている点も良く分かった。僕のような素人でもある程度付いていけたのは、著者の親切さにも因るものだ。
但し、やはり最後の「世界共和国」の部分が弱い。この段階でいささか唐突に
「われわれに可能なのは、各国で軍事主権を徐々に国際連合に謙譲するように働きかけ、それによって国際連合を
強化・再編成することです。たとえば日本の憲法第九条における戦争放棄とは、軍事主権を国際連合に謙譲
するものです。各国でこのように主権の放棄がなされる以外に、諸国家を揚棄する方法はありません」
とある。
著者はこれを本当に信じているのだろうか。
例えば本書において、著者は国際連合を論じていないと僕は考える。現在の国連の問題点、あるべき国連という議論を経た後で上記を語るのであるならまだ説得力もあろうが、それがなされぬ前に上記を提出することはどう見ても性急ではなかろうか。本当に軍事主権を任せるに足る組織なのか、そもそも国連を動かす論理が何なのかが見えないからだ。
また日本の第九条が、そういう意味なのかは現実を見ると大いに疑問だ。自衛隊を国連に謙譲するという議論も本書にはない。
この点が本書の決定的な弱い点だと僕は思う。但し、それを著者に対して安易に批判出来るとも思えない。上記のような結論しか著者にしても出せないという点から著者の苦悩と、ある種の絶望が見て取れるからだ。
僕には著者の考える方向性に世界の未来があるかどうかが見えない。本書は実に面白いし、大変勉強になる。特にマルクス関係は著者の本を読むことで理解が深まったと思っている。幸せな読書だ。但し、最後の部分で語られる未来に、幸せの予感が無かった。それが現段階の読後感である。