「今、会いに行きます」に代表される市川作品のファンタジーのような淡い純愛作品を期待すると見事に裏切られる一冊。彼の作品の私のイメージとは全く雰囲気を異にする作品。3つの異なるストーリーがおさめられているが、どの物語にも殺人や自殺といった死がテーマに盛り込まれている。その雰囲気は暗く、時に切ない。特に二作目の「世界中が雨だったら」は、少年の逃げ場のない緊迫感が克明に描かれ物語の引き込まれた。両親からの愛情の欠如や、いじめの対象でしかなかった虫けらのような学校生活。多くの負の要素が少年の心
を老人のように変えてしまったのだろう。唯一の見方である姉の救いの手も届かない。切なさに涙が止まらなかった。ラストにはほんの少しの光明が残る。後味の悪さを鑑みても一度は読んでほしい秀作。