さりとて、本書を読む意義がないとは言いません。例
えば、最近報道された厚労省の国民健康・栄養調査で
の所得と運動習慣や肥満度に相関性があるという結果
と、本書が指摘する男性長寿日本一になった横浜市青
葉区の住民の世帯収入が著しく高いということとは正し
く符合します。本書はその流れを、かつての長寿地域で
の都市化に伴う伝統食の衰退と、食育を通じての健康
づくりという視点から跡づけようとしています。つまり長
寿は遺伝子によるものではなく、環境(とりわけ食環境)
によるものだと主張しているわけです。
それはともかく、アフリカのマサイ族での高血圧症の著
増、ブルガリア・ルーマニアでの短命化の進行、そして
今や日本に次ぐ長寿となった香港やマカオなど、豊富な
事例の紹介は長寿地域を築く要因を示唆して飽きさせま
せん。医学者がよく使う統計資料は少なく、気楽に読め
るのが何よりです。
著者は食育基本法の推進者、我田引水のきらいがあ
るというなかれ。とりあえずわたしは、減塩のため今日
から好物の漬物を控えようと思いました。