まず、最初の「あなたにとってお金による支えとは何か」では、生活習慣としての貯蓄の心構えから、リスク、リターンにかかわる基本概念、経済と金融、および金融商品とのかかわりが紹介される。パート2「基礎を作る」では、会社の福利厚生(年金など)に関するチェックポイント、クレジット(カード)、リース、節税など、アメリカならではと思われる事項も含め、資産形成に役立つツールの利用について検討を喚起する。
パート3は「投資知識基礎口座」。基礎というだけあって、新聞の株式欄の見方に始まり、株、債券、投資信託が解説されているが、ややシンプルすぎるきらいもある。題名から連想されるような特殊な「トレードテクニック」を期待する向きには物足りないかもしれない。ただ、いたずらに目先の情報に振り回されるのことをすすめるのではなく、「業界トップ」「資産内容」などの視点から「長期間保有したいと思う株を買え」という著者のスタンスには同意したいところだ。
また、パート4「生活の変化に伴って、投資スタイルも変化する」では転職、結婚、出産および子どもの養育、遺産相続など、人生の節目における資産運用の留意点が語られる。このあたりは、日本とアメリカでシステムが異なるので、アメリカ社会の知識としては興味深いが直接の参考にはなりにくい部分ではある。
パート5「オンライン投資」は、オンラインブローカーの利用について、さらにパート6「高等テクニック」は、オプション、先物、不動産、オルタナティブなど、もう一歩踏み込んだ投資メニューについての紹介となっている。
こうした指南書がアメリカで売れるということは、アメリカ人がいかにライフスタイルの隅々に資産運用についての明確な意識を持っているか、ということだろう。逆に終身雇用の前提のもと、税金は源泉徴収、社宅住まい、現金は社内預金、年金は企業の確定給付…という企業丸抱えの環境で「お金」について真剣に考える習慣の少なかったわれわれ日本人にとっては、よい刺激になる。根っこからライフスタイルを見直すための指南書としては好適の1冊だ。(杉 良介)
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