リスク社会論で有名なU.ベックの講演集ですが、はっきりいってつまらない(笑)。
ベックが80年代に書いた
危険社会―新しい近代への道 (叢書・ウニベルシタス)は、レビューも書きましたがとても面白いのです。あのレベルの面白さを本書に期待すると、ガックリ来ます。まあ本の性質が全然違うので比べても仕方ないかも知れませんが。
全体的に論点が細切れで表面的だし、講演だからというのもあるんでしょうが、左翼的というか素朴な市民主義的なドグマが散見されて、『危険社会』に見られたような社会科学者としての緻密な分析はあまりありません。
ちょっとなるほどと思った論点を挙げるとすれば、「危険」の定義について、「危険というものは、世界の外側で私たちの意識とは独立して「それ自体」として存在するようなものではまったくないのです。……社会的な構築物なのです。」(78頁)と言っているように、何がどれぐらい危険なのかは客観的に一意に決められるものではなくて、危険というものは社会が定義して初めて意味をもつものだという見解です。
要するに一種のコンストラクティビズムで、ベックはべつにそれだけを強調しているわけではないのですが、たとえば「フクシマ」の原発事故後の論争をみていると分かるように、「何が危険なのか」「どれぐらい危険なのか」は専門家があれこれ議論してもなかなか決められるものではなく、結局のところ社会がどう考えるかに依存して決まるということはよく分かりました。