歴史には大河が伴う。世界史を見れば、古代ローマから、ゲルマン民族大移動、ルネサンス、産業革命、列強の台頭、世界大戦へと続く大きな流れがある。
デザイン史にも大河が存在する。それは、デザインの祖ウイリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフト運動を源流とし、アール・ヌーボーやドイツ工作連盟へと流れ、途中ロシア構成主義という溜りを経て、バウハウスやデ・ステイルへとたどり着く流れである(第二次世界大戦後は価値観の多様化などもあって、デザインの流れは細分化する)。
デザイン史をこの本で初めて触れる方には、一度読むだけでその流れを捉えきるのは難しいかもしれない。けれども、少なくとも各時代の雰囲気を感じ取ることはできそう。「これがアール・ヌーボー」「これがロシア構成主義」といった各時代のデザインの特徴はわかるのでは。というのも、各時代の象徴的なデザインの図が、一個ではなく複数載っているから。同じページの図版には、共通した特徴を見てとることができる。
この本は、本文と図版の両方が無いと成り立たないと思う。ただ、味わいどころとしては、図版のほうに軍配が上がる気がする。それは喩えるなら、解説を読みに美術館には行かないようなものだ。読者のあなたは「世界デザイン史展」を訪れ、デザインの歴史を順路に従い見て回ることになる。テーマごとに分けられた各部屋には詳しい解説が付いている。あなたのお気に入りの作品とその時代を見つけられるかもしれない。それほどでもないデザインはささっと素通りすればいい。
好き嫌いとはまたちょっと違う、善し悪しという尺度で観てみることもできる。ここに載っているデザイン作品は、誰が観ても「よい」と思えるものばかりだと思う。