もう40年ちかく海外コミックの紹介をされている小野耕世氏の最新著作。
過去を振り返りながらも常に現在進行形で新しい作品を探求、紹介し続けている、そのバイタリティには驚かされる。
今作も比較的新しい作品が主に取り上げられており、話題になった作品から、そうでない作品まで多種多様な作品が独自の切り口で紹介されている。
日本のコミック文化は出版部数でも作家の数でも世界的に見て抜きんでているため、読者は自国の作品だけで満足し海外の作品が省みられる事が無かったとされる。しかし、海外にも日本に負けないくらい広大で豊穣な作品群が存在する事はこの本を読んで頂ければわかると思う。
コミックが大好きな日本人がこの豊穣な世界を知らないのは、本当に勿体無い、日本のコミック文化にとって大きな欠落であると言っても良い。
確かに海外のコミックは日本の漫画に比べると、大判でフルカラーだったりするために割高で、部数も少なく書店で見かけることも少ないとは思うが、それでも最近はコンスタントに質の高い作品が邦訳出版されていて、海外コミックに触れる絶好の機会が来ている。この本の中でも紹介されているパコ・ロカ著『
皺』(小学館集英社プロダクション)の邦訳も最近出版された。大変素晴らしい作品なので興味が沸いた方は是非読んでみていただきたい。
小野氏の著作は主にエッセイで、海外コミックの本格的な解説書などは書かれてはいないのだが、その知識量は半端では無い。正直、アメコミやBDの解説書を書いているそこいらの研究者より博識で、なおかつ実地で海外の作家や研究者と数十年に亘り交流している大変貴重な生き字引でもある。
その広範囲な知識の全体像を、是非ともご存命のうちにまとめてもらいたいものである。