蒸気機関のワット、電力システムのエジソン、飛行機安定技術のライト兄弟とカーティス、無線通信のマルコーニ、さらにトランジスタ、半導体、自動織機、レントゲン。そこには、社会を変えた科学技術上の「発明」と、その実用化を支え、巨大な権利をももたらす「特許」取得の栄光と挫折、あるいは悲喜こもごもの人間ドラマがあった――。テクニカルな説明で歯が立たない部分も一部にありはしたが、典型的な文系の評者にとっても、本書の具体的な事例紹介と解説、そして展望は興味津々。時系列的・理系的な「発明物語」ではなく、あくまでも人間くさい「特許をめぐる攻防」という視角から、その足取りと現在が活写されている。それやこれやで、大層興味深く読めた。
著者は元特許庁の技監で、私立大阪工業大学が知的財産学部を創設した際の初代学部長を務めた、特許や知財の第一人者のひとり。これまで専門書や学術論文を発表・公刊することはあっても、一般向けの啓蒙書はなかったようで、本書は小ぶりながらも内容の濃い、水先案内的で切れ味のいい佳作になっているように思う。