本書は、そのスティグリッツが、世銀時代にいくつもの発展途上国を訪れ、そこで目の当たりにしたグローバリズムの現実をもとに書き下ろされている。スティグリッツはエチオピアで「IMFの驚くべき政治と算術の世界をありありと見せつけ」られ、IMFに対する疑念を抱きはじめる。資金を出している市民や直接影響を受ける発展途上国の市民ではなく、先進国(特にアメリカ)の意向に左右される体質、救済対象となる国の主権をおびやかすやり方、途上国には市場開放を迫っておきながら、都合の悪い産業においては保護貿易を貫くダブルスタンダード、IMF設立を主張したケインズの意図とは反対に市場礼賛主義に陥っている現状など、さまざまな問題点が指摘されている。IMFの指導のもとでますます貧困が拡大した国の例や、東アジア危機、ロシアの失敗、アルゼンチンの破綻、反対にIMFと距離を置くことで成功したボツワナや中国の例などが挙げられており、IMFの政策の不手際が指摘されている。
スティグリッツは、アメリカ・IMF主導のグローバリズムについては手厳しい評価を下しながら、グローバリズムが本来持つメリットについても主張している。貧困をなくし、世界を幸せにする真のグローバリズムとは何か。最終章で示されたスティグリッツの提言が、きっと何らかのヒントになるはずだ。(土井英司)
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98年のアジア通貨危機、ソビエト連邦崩壊後の共産主義国の資本主義社会への移行の失敗など数々の事例を経済学的に分析し、IMFがそれらの国家に押付けた政策が逆効果であり、経済学的にも間違っていることを本書では次々と明らかにする。
にもかかわらず、根本的に彼とIMFとの間にある本質的な違いは、経済学的な立場の違い(ケインジアンとマネタリズム)の違いではない。
ここにあるのは、経済政策の、そして経済活動の「目的」の違いである。「経済とは何か」という問題に対する、姿勢の違いである。
経済政策の目的を貧困の絶滅と発展途上国の発展??願う彼と、市場主義を絶対的に信奉して金融界の利益のみを考えているIMFの違いが根本的にあることが、本書では明かされている。
しかも、彼は邦訳タイトルから想像されかねない「反グローバリズム」主義者では決してない。世界を幸福にするグローバリズムの在り方を模索する姿がそこにはある。峻厳な「真の」経済学者の姿がここにある。
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