著者ヨアヒム・エルンスト・ベーレント(独)は70年の大阪万国博覧会で「ジャズフェスティバル」に関わったジャズ評論家である。ゆえにジョン・コルトレーンなどジャズに関する考察も本書では試みられている。そもそも副題ナーダ・ブラフマとは何なのか? これは簡単に解説するならば、ブラフマとは世界最古の経典である「ヴェーダ」に記されたヒンドゥ-教の三位一体の神=ヴィシュヌー・シバ・ブラフマーを指している。万物創造の神という意味である。ナーダとは音。つまりナーダ・ブラフマとは「神は音なり、音は神なり」という意味になる。なんのこっちゃと思われるかも知れない。しかしこの概念は、現代最先端の科学「量子物理学」に結び付けると明確になる。量子論の学説の一つに「ストリング理論」がある。原子・素粒子未満の究極の次元では、紐状の形態がありそれが弦の様に振動した波動が、原子や素粒子として観測される)との仮説が有る。つまり鉄も豆腐も我々の肉体も、究極の次元で万物はこの「波動」によって編まれている。そして「音」もまた波動である。私見の推測に過ぎないが、ゆえに「世界は音である」と著者は言いたいのだろう。ただ本書は堅苦しい学術書のたぐいでは無い。我々を取り巻く音、楽しむ音「音楽」をユニークな視点で考察している。本書を読了したなら、変な言い回しだが「耳からウロコが落ちる」だろう。ジャズファンならば必読。ヒーリングミュージックなどというジャンルが人気をはくしているが、そもそもなぜ音楽が人を癒すのか、本書にはその秘密が明かされている。