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世界は分けてもわからない (講談社現代新書)
 
 

世界は分けてもわからない (講談社現代新書) (新書)

by 福岡伸一 (著)
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Product Description

内容紹介

60万部のベストセラー『生物と無生物のあいだ』続編が登場! 生命は、ミクロな「部品」の集合体なのか? 私たちが無意識に陥る思考の罠に切り込み、新たな科学の見方を示す。 美しい文章で、いま読書界がもっとも注目する福岡ハカセ、待望の新刊。


内容(「BOOK」データベースより)

顕微鏡をのぞいても生命の本質は見えてこない!?科学者たちはなぜ見誤るのか?世界最小の島・ランゲルハンス島から、ヴェネツィアの水路、そして、ニューヨーク州イサカへ―「治すすべのない病」をたどる。

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43 of 56 people found the following review helpful:
5.0 out of 5 stars 「分けて」しか紹介できないが、全体を読んで欲しい良書, 2009/7/21
By hontaka (東京都府中市) - See all my reviews
この書籍の白眉は第8章以降の細胞のがん化を巡る科学界の
一大スキャンダルの話題だと思いますが、この部分は結構
専門的であり、僕の説明能力では紹介が不可能。さらに
いえば、この本自体が「分けてもわからない」のタイトルのごとく、
各章が有機的に結びついているのだけれど、自分の理解の範疇に
ある部分を「分けて」紹介してみます。

先日「臓器移植法」が改正されいわゆる「A案」が採決されました。
脳死は人の死と規定しながらも、臓器移植には家族の同意が必要
(=脳死状態で生きていてほしいと家族が望めばそれは可能)と
いう点で「この案でいいじゃん。運用してからまずいとことは改
正すれば」と思っていました。しかし福岡氏は死という部分だけを
「分けて」考えることに疑義を挟んでいます。引用しますと―。

死んだと定義した身体から、まだ生きている細胞の塊を取り出したい。それと同じ動因が、ヒトの出発点近傍にも存立しうる。受精卵およびそれが細胞分裂してできる胚が、脳始以前の、まだ人でないものと定義しうるなら、それは単なる細胞の塊に過ぎない。

つまり「脳死を人の死」とするならば、論理的帰結として、
人が生まれる段階において、「脳」というものが形成される
=「脳始」の段階=までは、人の生は始まらないことになる
のでは、というのです。人の脳が出来上がるのは受精後二十四
週から二十七週なので、それ以前の分裂中の受精卵はただの
細胞として扱われ、それを摘出して医療に使おうが、
(これは福岡氏は書いていませんが)単に堕胎してしまおうが、
それは「人の生」を獲得していないモノに過ぎないのだから、
とがめられることはない、と。

もちろんこれは「論理的な帰結」であって、生と死を別の
ものと考えればいいだけの話ではありますが、「死」「臓器移植」と
いう部分だけを見ていては気がつけない視点でした。と、
このような逸話を時には専門的に、時には易しく説いてくれています。
これはまた何かの賞を取ってしましそうな良書です。
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34 of 48 people found the following review helpful:
5.0 out of 5 stars 上質のミステリの味わい, 2009/7/26
By 東の風 (埼玉県) - See all my reviews
(TOP 50 REVIEWER)   
 “部分と全体”“切断と連続”という、本書の重要なテーマになっている構図が、著者の話の持って行き方、話の構成の仕方にも生かされているところが見事。
 一例を挙げれば、第8章から展開される、ラッカーとスペクターによるATP(アデノシン三リン酸)分解酵素の精製実験の件りが、本書の前半で紹介された須賀敦子の「ザッテレの河岸で」の中の水路の名前とつながるところ。ジグソーパズルのピースが組み合わさり、はめ込まれて、ひとつの絵柄の完成を見たような思いにとらわれました。
 何かこう、上質の本格ミステリの謎解きを味わったような心地と言ってもいいでしょうか。エラリー・クイーンの『Xの悲劇』『Yの悲劇』『十日間の不思議』といった傑作にある、部分の謎が寄り集まり、するすると合わさり、それが解き明かされた時の面白さ。それに通じる妙味を感じたんですね。一見バラバラに見えた話の中の点と点が結ばれ、あたかも星座のような絵柄を最後に生み出す本書の仕掛けと構成に、わくわくしました。

 細胞を擬人化して表現したり、ジグソーパズルやトランプ・タワー(トランプカードで作る城)を引き合いに出しながら、生命のミクロのことを文学的に語っていく文章もいいですね。第1章「ランゲルハンス島、一八六九年二月」、第2章「ヴェネツィア、二〇〇二年六月」の件りは、特に素晴らしかった。詩的な美しさを持った文章のきらめき。<彼女の視線は私におそらく赤い光の粒子を投げかける>p.33 というところなど、思わず、ぞくぞくしてしまいました。
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6 of 9 people found the following review helpful:
5.0 out of 5 stars 私たちはいつも星座を探している, 2009/8/16
By aaoiieuu (千葉県) - See all my reviews
ここまで分かりやすい科学本は非常に稀であり、
ここまで詩的な科学本もまた稀有である。

視線を感じるメカニズム、保存料としてのソルビン酸、
ES細胞のロジック、細胞の死など、
科学の中でも我々にとって身近なトピックスを挙げて、
平易な表現と擬人化によってわかりやすく解説している。

さらに、最も希少な必須アミノ酸とコナン・ドイルの踊る人形や
ヴィットーレ・カルパッチョの「コルティジャーネ」と「ラグーンのハンティング」を題材とし、
科学という分けられた世界だけではなく、
文学や芸術といった要素を融合させることにより、
まさに福岡伸一ワールドと言えるような世界を構築している。

また、境界の向こう側とこちら側、空耳・空目など、
認識学的なアプローチも試みており、
本来分かれていないはずの世界を我々が分け隔てて認識していることにより、
様々な誤謬や錯誤が生じることを浮き彫りにしている。

そして、本書の主題とも言えるテーマが、
第8章からエピローグにかけての
マーク・スペクターとガン細胞のリン酸化カスケードにまつわる話題。

1つの分子は様々な分子に作用し様々な分子によって調節される。
そして無数の分子で構成される生物。
分子生物学はまさに生物という全体を分子という部分に分け隔てて考察する学問であるが、
我々は分け隔てることによって様々なものを見失ってしまう。
本来は分かれていないはずの世界を見失ってしまう。
しかし、分け隔てない限り人間は世界を認識することができない。

分かるようにするためには分けなければならない。
しかし、分けることによって分からなくなる。
この矛盾を作者はどう捉え、どうアプローチしていくのか。
そこも本書の醍醐味の1つかもしれない。

この本から湧き出る知識の源泉や考察の濁流は、
知的高揚感という浮力によって我々の心を大きく揺さぶるポテンシャルをもつ。
この浮力が文系の人間にとっていかなるものであるのかは
彼らのレビューを参照する他ないだろうが、
理系の人間にとっては、さらに大きな浮力となって心に強く作用するだろう。
一読の価値は間違いなくある、と私は思う。
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