衆議院憲法調査会長の中山太郎の編纂した「世界は憲法前文をどう作っているか」は、62ヶ国78件の憲法前文を収録している。それらが示す真実は、人類普遍の原理は政教分離ではなく「憲法典の起草は歴史的法律学に依らなければならない」という原則であり、大日本帝国憲法の前文に相当する明治天皇の「告文」と「憲法発布勅語」こそ人類普遍の真理に合致している。
それなのに本書には、世界各国の憲法前文に加えて日本国憲法前文とこれについて憲法調査会で表明された意見が載っているが、明治天皇の「告文」と「憲法発布勅語」が載っていない。
中山太郎は、この本のはじめに、21世紀の日本のあるべき姿を考える上で世界の国々はどういう「国のかたち」を考え、それを憲法前文に表そうとしているのかを知ることは大変重要であるといいながら、帝国憲法を無視する。
なぜなら中山太郎はフランス革命を「市民革命」と肯定的に評価しており、欽定の帝国憲法を近代以降の立憲的な憲法とは見ていないのである(本書8ページ)。
フランス革命は左翼全体主義の起源であり人類の負の遺産である(
ヴァンデ戦争―フランス革命を問い直すや
正統の哲学 異端の思想―「人権」「平等」「民主」の禍毒参照)。このことが明らかになっている21世紀の初頭において、現存する世界最古にして最長の王朝である日本国の保守政党を名乗る自民党の長老が、フランスを地獄に叩き落としたシェイエスの革命的制憲論(第三身分とは何か)を立憲主義に基づく考え方と言うのである。
19世紀末に伊藤博文ら帝国憲法の起草者たちは、フランスに暴力革命とその後の約一世紀にわたる混乱をもたらした元凶がルソーの主権在民論とルソー信徒であったシェイエスの革命的制憲論にあると看破し、これを断固として日本の憲法から排除したというのに、衆議院憲法調査会長を務めた自民党の中山太郎は、21世紀に生きる政治家でありながら依然として帝国憲法の起草者たちの足元にも及ばないのである。
自民党は本当に情けない・・・