世界の10のオーケストラを記したものです。とはいえ、そのオケを振る指揮者の列伝のような書物で、500ページを超える内容は実に読み応えがあり、詳しいものでした。巻末に参考文献が列記されていますが、丹念に調査してあり、これで索引が用意してあれば指揮者やオケの事典の代用になるのに、と思った次第です。
冒頭に書いてあるように、筆者が別の書籍で取り上げたカラヤンを軸に10のオケが選ばれています。選考基準は本書の10ページの見開きの表を参照してください。
内訳は、シュターツカペレ・ベルリン、ニューヨーク・フィル、ウィーン・フィル、レニングラード・フィル(サンクト・ペテルブルク・フィル)、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ、チェコ・フィル、イスラエル・フィル、フィルハーモニア、パリ管です。
シカゴ交響楽団やロンドン交響楽団がこの書籍から外れているのは、カラヤンが指揮していないという理由ですし、フィルハーモニアが入っているのは、若き日のカラヤンの活躍の場であったからに他なりません。ですから、10のオケの選定内容に異論があるのは当然としても、記述の分かりやすさ、詳しさが本書の特徴と言えます。往年の名指揮者の名前が綺羅星の如く並んでいました。演奏家も触れていますし、当時の世相、特に戦争との関わりは本書の中核をなしています。普段あまり意識しない経営者の関わりやオケの成り立ちを知ることができたのは収穫でした。
中川右介氏は「クラシックジャーナル」編集長で、クラシック関係の著書を執筆した経験が本書に生きており、魅力的な挿話が詰まっていますので、クラシック音楽に造詣の深い人もそうでない方も一様に満足するものだと思います。