この本は必ずしも駄作機を扱った内容では無く、従って著者名も岡部いさく氏になっています。
今回の本に収録されているのは実戦(少なくとも第一線部隊に配備された)機種で23テーマ、計画や試作機生産止まりの機種が9テーマになり、しかも必ずしも英国産機では無く英国で使用された米国機が7機、逆に英国産でありながらフィンランドのホーカーハリケーンの話が収録されたりしています。
構成は「駄っ作機」シリーズと同じで機体名と仕様を記述した扉・著者の手になる機体イラスト・本文・一口コラムで1テーマを構成しています。
駄っ作機でこそないものの文体は同じで肩のこらない内容になっており、飛行機ファンにお薦めの本です。
本文の中で
・グロスターゲームコックをフィンランドでライセンス生産する記述がありますが、このことに言及した
Gloster Grebe & Gamecock (Orange Series)の中で、英国のインペリアル単位を自国のメートル単位に換算して製作する時相当トラブルがあった様です。
尚、ゲームコックの艦上戦闘機版ガンベットは日本の中島で三式艦上戦闘機として生産され後に中国で米国人ロバート ショートの乗るボーイングP-12と初の空中戦を演じました。
・A.W.35シミターが1940年にドイツの侵攻を受けたノルウェーの新鋭戦闘機との記述がありますが、当時のノルウェーの第一線戦闘機はグロスターグラデェターで他にカーチスホーク75A(本書に収録されているカーチスモホークと同型機)の第一便が梱包に入ったままドイツ軍に接収されました(ホーク75Aの未納分はカナダで亡命ノルウェー人飛行士の訓練に使用されたそうです)
・アブロアンソンのエピソードは一見ひ弱そうなこの飛行機が空戦で意外なタフさを発揮した話ですが、このアンソンが自分より格下の相手に挑戦し一敗地にまみえた話もあります。1941年1月26日ソマリアのアフマヅ上空で写真偵察中の英空軍第60中隊のアンソンがイタリア空軍のカプロニCa133(高翼単葉固定脚の三発機で爆撃機にも使える植民地用の輸送機)を攻撃して返り討ちにあいました。皮肉にもこれがCa133の唯一の撃墜戦果だそうです。