物足りないというのが正直なところだ。対象への迫り方が深み、範囲ともに甘いのが問題だ。紙幅の都合というのもあるだろうが、それなら遠慮せず図鑑サイズでやって欲しかったところだ。この本の構成では、真性ミリオタはまず満足しない。深みが足りないから。戦争遺跡に興味のある旅行者の役にも立たない。アクセス方法を省いているから。戦争に全く興味のない人には、もちろん面白くもない。
困ったことに、近代要塞の性格が、この本の中途半端さを増幅させる。だって、どれもこれも殆ど役に立ってないんだもの!どれもこれも仰々しい武装、重装甲でいかにも難攻不落を誇示していながら、あっけなく陥落する。空挺部隊が背後から迫り、あるいは艦砲射撃・空爆を受け、あるいは一部を突破され、迂回され、要塞は無力化されていく。役に立ったとしても、せいぜい敵軍の遅滞に過ぎず、敵の侵入を跳ね返すことはできない。
そういうことだから、戦史解説やイラストによる要塞構造解説にも今ひとつノリきれない。やるならもっとマニアックに、架空戦記を書くノリで、実現しなかった要塞を巡る死闘を空想させるように、微にいり細をうがった方法で、要塞の全体構造を解説すべきではなかったか。荒俣宏的な方向性で、「変なものだから愛する」という方向が面白いと思う。