書き出し
On the outskirts of the small town of G- in eastern Austria lies a mysterious cemetery hardly an acre in size, filled with the remains of paupers for the most part, their places marked by nothing at all, or at best by tombstone fragments now all in the wrong spots. 最初のページを読む
著者の晩年の短編集です。1987年の英国での出版とクレジットされていますというから、著者がなくなる10年以内の作品のようです。題材はいくつかの国に分かれています。オーストリア、架空のアフリカの国、そしてローマ法王の南米訪問、しかし半分以上はアメリカを舞台としております。時代は明示されているものでは2090年を対象としたものもありますが、どれも1980年前後の世相に刺激を受けたもののようです。といっても、もはやその世相や事件を思い出すのが難しいといったところでしょうか?これらには、スリーマイル事件、ジンバブエの独立、ローマ法王への暗殺未遂、レーガン大統領の悪の帝国発言、イランをめぐるコントラ事件、といったところでしょうか。テーマはどれも著者ならではの陰惨なものです。どれが一番印象を受けたかというと、やはり"No End in Sight"です。これは齢200に達する老女の話です。舞台は近未来で、医学の進歩により決して死を迎えることのない老女の姿が陰惨に描かれます。この老女が示す死と生の本質の姿は単純な生命賛美というアメリカののポジティヴティンキングへの疑問を呈示するものでもあります。このような老年に至って、このような世界の描写へ挑戦した著者の心象風景は想像を絶するものですが、この世界の解明は別の作品を待ちましょうThe Talented Miss Highsmith: The Secret Life and Serious Art of Patricia Highsmith。解放の神学への共感を示唆した”Sixtus VI"はリベラル、patriciaの面目躍如といったところでしょうか。最後の作品でもあります”President Buck”の結末は、この種のnuclear exchangeを題材とした作品の常らしく、On the Beach (Vintage Classics)を彷彿させます。