ヨーロッパ中世の歴史上、後世に受け継がれていく社会の仕組みに力点が置かれた著作。通常の通史としての歴史記述というより、著者独自の問題意識にのっとった構成を採っている。その問題意識は初版のあとがきに載っているが、先の大戦前からヨーロッパ中世の研究を続け、戦後にも一貫して研究を続けた著者として、統治機構への分析の分量が多いのは自然なことだと思う。しかしその一方で経済的分析や文化的な事項への目配りが疎かになっているかといえばそんなことはなく、ここでの分析を推し進めていけば次の時代につながっていく社会的な力の及び方がよくわかると思う。
また、日本での事柄を引き合いに出して説明しているのも一つの特色で、ヨーロッパ的発想と日本的発想がどういう点で異なり、また似ているかを具体的に指し示しているのも読んでいて面白い。ここでの記述を辿りながら「デカメロン」「神曲」「ドン・キホーテ」のことを思うと、また違う風にそれらを読めるのではと思った。
政治史に重点が置かれているのは確かだが、ここで触れられている統治機構の仕組みは今日本で採用されている仕組みと無関係ではないので、その方面の理解のためにも役に立つと思う。非常に読み応えがあった一冊。