懐かしさも含めて、メロメロになって耽読してしまった『私の好きな曲』に次ぐ、文庫コレクションの1冊。これまた懐かしの『世界の指揮者』だが、新潮文庫版以降に書かれたものも入っていて有難い。まあ、全ての文章は初出時に読んでいるので、全てが懐かしくもある。ノスタルジーとメロメロ(愛)が相乗すると思考停止同様の耽溺となる。
吉田レベルの文章になってくると、反対意見を抱こうがどうしようが、もう感嘆するのみだ。
たとえば、クナッパーツブッシュのコンサートでの有名な「居眠り」のエピソード。改めて読んでも見事だ。引用されるスコアも、それだけを見ていてもさっぱりわからないが、吉田の文章の中において眺めていると楽音が鳴り出すようだ。「ヴァントが死んだ」と1年しか違わない吉田が書いている。それすらも感慨深い!
吉田秀和は小林秀雄との交流も深く、その小林の影響が骨がらみに深いと思っていたが、小林より上ではないか。いや、上とか下とかというより、2人は別種の批評家であると今回感得した。20歳台の頃は小林にも酔わされたが、吉田秀和はいまだに痺れさせる。
本書にも耽溺状態であって、あれこれCDを引っ張り出しては、音源を聴きながら文章を反芻するばかりである。
困るなあ、他にやることもあるのに・・・。