現代日本における「ざっくり」宗教学の権威である著者が、世界の代表的な宗教について平易に解説した本である。ユダヤ・キリスト・イスラムのセム系一神教、仏教を中心としたインド系宗教、中国文化圏における宗教・道徳、日本の宗教史について、最新の研究成果や議論は必ずしもふまえてはいないが、一般常識的にはこの程度で通じるだろうというレベルの語りを示している。
特定の宗教や信仰に決してくみしない宗教学、それが著者の目指すところであるという。どんな宗教についてもフラットに淡々と述べていく文章は、その目標へのかなりの忠実さを感じさせる。日本人の「無宗教」は実は多様な宗教の共存を許容できる懐の深さを意味するのではないか、という議論を近年しばしば見るが、この日本的な「無宗教」性を最も見事に体現している宗教論者が、この著者なのかもしれない、とふと思った。