本書は「第三惑星」「世界の幼少期」という著者の過去の著作を再掲したものです。
「第三惑星」では、人類の多様性を8つの家族構成の違い(親子関係や兄弟関係の従属性や平等性など)で分類可能とし、それらの特徴について述べています。
様々なイデオロギーが世の中にありますが、著者は各々の家族構成が特定のイデオロギーを自然発生的に生み出したと結論づけており、イデオロギーが家族構成を作り出したわけではなく、またイデオロギーが家族構成を無視して広がるわけではないことを解説しています。
また、これまでの人類学や政治学では、家族構成という人類の基本的な最少集団単位を重視してこなかったが故に、人類の多様性やイデオロギーの発生メカニズムを見極められなかった、としています。
但し、何故8種類の家族構成の違いが生まれたか、また定着したか、については、本書では「偶然」としています。ただ、この結論については、著者の同僚からの建設的な批判により、その後の研究で解き明かそうとしているようです。
「世界の幼少期」では、「第三惑星」の分析を踏まえて、家族構成の特徴(親子の関係、夫婦の関係など)により、当該エリアの経済の発展の仕方が異なること、また経済の発展が結婚年齢の上昇、識字率の向上、死亡率の低下、出生率の低下といった流れの結果として起きる、としています。
また、経済学における経済発展の理論は貨幣換算できるものだけを取り扱っており、それだけでは発展の因果関係を見誤るとしています(それでも取り扱うようになっただけましではありますが。アンガス・マディソンが過去1000年以上の経済データを収集・分析するまでは、経済学にはデータに基づく経済発展の理論はありませんでした)。
人類学における著者以外のデータ分析については不勉強なのでよく知りませんが、経済学においてはいろいろと経済発展のパラメータを特定しようという動きが一部にありますので(ウィリアム・バーンスタイン「豊かさの誕生」、ダイアン・コイル「ソウルフルな経済学」など)、これらと統合できれば、更に経済発展を含めた人類の発展のメカニズムが明らかになると思います。
何れのものも、広範かつ膨大な情報の分析に基づいた説ですので、検証可能性があるということから「科学」といえるでしょう。データに基づかない理論(仮説)も科学にとっては大事なものなのですが、理論という名の妄想もかなり多いですので、この手の著作は結構ありがたいと思います。