全ての生命は水である。この切り口は新しいと思った。
ミクロからマクロへ、そしてまたミクロへ、海と地球と宇宙と人とを繋いでゆく「世界の合言葉は水」。SFやファンタジーの要素も強いものの、どこか架空とは思えないようなリアリティを帯びた不思議な話である。
最初はどういう設定なのか分かりにくい部分があるものの、読み進めるうちに徐々に全体が見えてきて、終わる頃には違和感なく物語を受け入れてしまえる。短編らしくワンエピソード・ワンテーマに絞られていているのも読みやすいと思う。
そして非常にコンセプトを感じさせる作品集である。特に「塩害の季節」「ぎゅう」が個人的に気に入った。物語自体もそうだが、発想がまず素敵。唯一、冒頭の話「おぼん」だけはテーマから外れている気がするが、これはこれで素敵。
独自の視点から生命を描くというのは、市川春子「虫と歌」に近いものを感じる。読後に頭を過ぎったのは、幸村誠の「プラネテス」や、或いは漆原友紀の世界観だった。
ただ、上記作品に感じたある種の残酷さだけでなく、気持ち良い清々しさがこの作品の根底には流れている。心を洗濯するような気持ちで読んでいただきたい。