地味な傑作機、キャンベラの(たぶん)日本初のモノグラフである。
キャンベラ(B-57)自体は日本にも駐留したことがあり、年長のマニアのなかには直接機影をご覧になった方々もいらっしゃると思われるが、特に若い世代にはなじみのない機体である。
本書のタイトルでもわかるとおり、もともとイギリス空軍の軽爆撃機として開発された機体であるが、のちにアメリカ空軍にB-57として採用/ライセンス生産されており、このこと自体本機がただものではないことの表れである。本書はそのあたりの経緯や多岐にわたる改造型を手際良く詳述しており、この地味な機体が傑作機であることを理解させてくれる。
全128頁、うちカラー写真16頁、モノクロ写真24頁、塗装図+図面22頁、残りが本文という構成である。
運用期間が長く、また配属先、ミッションがバラエティに富んでいるため、写真には様々な塗装、改造の様子がおさめられている。キャプションもこれらを丁寧に説明してあり、情報量が多い。また、多くの改造型を網羅しているため、図面も多数掲載されている。
本文はおなじみの執筆陣によるもので、キャンベラとB-57のそれぞれの開発/各型解説、機体設計の技術解説、設計者テディ・ペッター小伝、実戦記録、後半生の主要な改造型である偵察機の概要、およびパイロット経験者によるフライトインプレッションから構成される。
特に印象深かったのは、設計者テディ・ペッターの小伝と、ロバート・ミケッシュ氏によるフライトインプレッションである。
テディ・ペッターは、E.Eライトニング、フォーランド・ナットなどの設計者として知られているが、今回はじめて多くの個性的な設計を実現したその人となりと、またそれゆえに会社組織との折り合いをつけることに苦労した生涯を、短い記事ながら読むことができた。
その作品を、同じく個性的でありながらも、ロッキードという大企業で技術者人生を全うしたC.L.ジョンソンや、手堅い設計でホーカー社の中核を担い続けたシドニー・カムのそれと比較することも面白いかもしれない。
日本機の研究者としても著名なロバート・ミケッシュ氏のフライトインプレッションは、実際に搭乗してミッションを遂行したパイロットにしかわからない本機の特徴や性格をたっぷり読ませてくれる。また、本機がいかに「傑作機」であったかについても、大いなる愛情と説得力を持って断言されている。
少年時代、横田基地に離着陸する本機を見るたびに低アスペクト比でだだっ広い主翼に違和感を感じていた(だって全然ジェット機らしくないんだもん。直線翼だし)が、本書によってその設計の必然性と、これがもたらした運用の柔軟性を知り、恥ずかしながら「なるほど、だから傑作機なんだ」と理解した次第。
地味な機体ゆえ、「ファントム」や「メッサーシュミット」ほど多くの読者が興味を持つとは思えないが、飛行機一般、特に一人の設計者の個性が機体設計に反映できた時代の飛行機に興味を有する方にはお勧めである。