平和を愛する現代英国の児童文学作家モーパーゴが2004年に著した史実に基ずく感動の物語です。1914年のクリスマスの日に第一次世界大戦の戦場で英独両軍の若き兵士たちが自発的に一時休戦を呼びかけて束の間の平和を味わった、という心温まる史実が愚かで悲惨な戦争の中で人間の善意が存在する事をもう一度信じさせてくれます。若き兵士である夫が妻に出した手紙が素直な感動を生き生きと伝え、来年のクリスマスまでには帰れるだろうと明るい見通しを語りますが、結局それが最後の手紙になってしまいます。物語の書かれていない部分で、夫の兵士には過酷な運命が襲い掛かったに違いなく、喜びの影に隠れた悲しい真実として決して忘れてはいけないと思います。数十年の時を経て手紙が見つかり、あの頃の若い夫に似た優しい青年が手紙を携えて、おばあさんとなって老人ホームで暮らす嘗ての妻を訪ねる奇跡は著者ならではの温かい心がこもった素晴らしい演出でしょう。忘れてしまいたい戦争の悲惨さとは別に人々に心安らぐ人間性を感じさせてくれるこの貴重なエピソードは、未来に向けて人間の善意があれば戦争は何時かなくなるという思いを強く抱かせる時代を超えて永遠に語り継がれて行く奇跡の物語だと思います。