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5つ星のうち 5.0
神話的人生,
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レビュー対象商品: 世界が生まれた朝に (単行本)
この小説の主人公は、文字を持たぬ時代から現代まで幾つもの時代を越えて、生きぬいてきた。この壮大な時間の流れが、小説に創世神話のようなスケールを与えている。しかし、主人公は特別に長生きしたわけではない。アフリカの時代の流れが早かったのだ。 西欧からの技術の流入により、日本人が数百年かけて経験した変化を一生の間に経験した人が、アフリカには本当にいたのだと思う。 本書の主人公マンダラ・マンクンクは、そんな神話のような人生を送った人物である。 植民地化以前、人々は豊かな自然とともに生きていた。バナナやヤシ酒などの食料や、野生の動物達の存在が、小説に総天然色の色合いを与えている。 この時代には、先祖から伝承された記憶をもつ長老ルケニのような人物が知恵者であった。それに対し、マンクンクは旺盛な好奇心と理解欲であらゆる事を吸収する、変化の時代における知恵者に育つ。 やがて異人の征服により歴史が動き始める。マンクンクは無礼で残虐な異人たちの行為に、驚き怒りを感じるが、同時に彼らの力の正体である技術や知識への強い好奇心を抱く。 この相反する感情は、多くのアフリカの人々が今でも心に抱いているのではないかと思う。 その後は社会の変化にマンクンクが翻弄されつつ、時にはマンクンク自身が社会を動かしながら話は展開していく。彼が年を取って時代に置き去りにされる頃に、小説は安らかな終末にたどり着く。 本書の帯には故立松和平氏の「これはアフリカ版『百年の孤独』だ。」という賛辞が載せられている。 ガルシア・マルケスの「百年の孤独」は、ノーベル文学賞さえも誉め言葉として力不足に聞こえる、20世紀後半を代表する小説だ。本書は子供でも読めるくらいに平易に書かれた小説であると同時に、確かに「百年の孤独」のような神話的な醍醐味を持っている。 マンクンクの人生が楽でないことは承知の上で、それでも評者はこの密度の濃い人生を羨ましく感じた。
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