マイケル・ムーアーの新作、米国の医療問題を扱ったドキュメンタリー映画「シッコ」を見て、キューバ医療に興味を持ち、この本を読んでみた。興味深かった点は、1.システマティックにプライマリーヘルスケアを実践していること、2.現場に密着した人材育成を大学で行なっていること、3.代替医療とITを盛んに活用していること、4.先端医療の研究開発が盛んなこと、5.米国との鎖国状態の中で、米国以外の国々と協力し、独自に医療システムを発展させたこと。但し、これらの情報の信憑性を公正に評価するには、著書が巻末に示す参考資料以外に、英語圏以外の資料にも目を通す必要がある。
得てして日本の学術は全てにおいて米国偏重主義の様相のなか、日本の医学の米国至上主義は最たるもの。医学(学術)と医療(現実)は似て非なるもの。英語による学術的言説が一般化している世界の傾向の中において、日本の医学が米国偏重主義でも仕方ないが、医療まで米国偏重主義では聊か良識が疑われる。日本の医療システムを考える際に、直接的な参考とは言わないまでも、色々と考えさせられる内容が詰まっている。また、医療同様、キューバが有機農業大国であることも興味深い。日本の医療界、公衆衛生学や社会医学の分野では全く注目されることのないキューバ。その現状を知るには良書である。と言うより、他にキューバの医療に関し、詳細に記述された和書はこれまで皆無であった。
医学や医療以外にも政治学や政策を専門とされている方にも一読の価値あり。