一読して驚嘆した。素晴らしい内容だ。研究者らしい多角的な分析と幅広く経済学の貴重な知見を紹介した誠実で有益な好著である。具体的な内容を以下に挙げておくので賢明な読者諸氏のご判断を頂きたい。経済学を志す学生から、心底から日本経済を憂うる心ある有権者、現代日本の沈滞感が気になる年配の方々まで幅広くお薦めしたい。
○日本では世代が若くなるにつれ、成長率は下がり失業率は高くなっている
○団塊の世代が社会に出た時の失業率は、何と1%台でしかなかった!
○公共投資の乗数効果は、80年代以降に低下している
○GDPの伸びよりも社会保障費の伸びの方が大きい。(=いつか必ず限界が来る)
○現金給付(児童手当や子供手当)では出生率は増えにくいが、現物給付では増える傾向あり
○世代間格差が大きな国は、経済成長率が低いという負の相関性がある
○年金制度はスウェーデンの自動財政調整システムやカナダのクローバック制が参考になる
○高度人材を選択的に受け入れる、イギリス型の移民政策が必要
細かい点で事実に反している箇所を指摘すると、日本の公的年金にはこれほど巨額の公費が既に投入されているのだから、カナダのクローバック制は税方式にしなくとも導入可能である。と言うよりすぐに実施すべき。
「若者の雇用状況の悪化が少子化を招いた」も正しくない。失業率の高い地方(例:沖縄県)の方が一貫して合計特殊出生率が高いのをどう説明するのだろうか。出生率の高い北欧は非正規労働者ばかりである。明らかに現物給付を含む家族政策の充実の方が影響度は大きい。
『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』「女性労働者の逸失所得の大きさが少子化の一因」も正しくない。もしそうであるならば、正社員 < 契約社員 < パート・専業主婦・無職 の順で合計特殊出生率が高まってゆくはずだが、実態はそうなってはいない。女性のマジョリティの消去的選好と雇用環境改善の意志・動きの弱さの影響度の方が高いのではないか。
『女女格差』橘木俊詔Data:読み込み度【熟読】社会的重要性【極めて高い】 入手元【書店】 お薦め度【Strong buy】