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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
講談社文芸文庫の真骨頂!,
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レビュー対象商品: 世の中へ・乳の匂い 加能作次郎作品集 (講談社文芸文庫) (文庫)
加能作次郎の作品が文庫本として世に出るのはこれが初めてである。個人的には、このことにより「講談社文芸文庫」の存在価値を再認識することになった。大げさかもしれないが、「文芸文庫」以外で出版されるということはありえなかったのではないかとさえ思える。この文庫、絶版になるかならないかの見極めが難しいのだが、だからといって「値段が通常の文庫本の倍くらいする」などといっているうちに本当に絶版になると困るので、迷わず購入した。編者が荒川洋治であるのも作次郎にとっては幸福なことであるにちがいない。荒川は福井県出身で、石川県出身の作次郎とは北陸の同郷といえる。初めて聞く人にとっては理解しにくいであろう能登の方言についての荒川の理解ある言葉は心に沁み入る。詩人は言葉に敏感だ。荒川自身これまで過去の作家のものを集めた重要な短篇集をいくつも編集してきているが、本書もそのなかのひとつに数えられるだろう。 荒川が解説で書いているとおり、作次郎は「能登を離れたあとも、心のなかで郷里との間を行き来し、子供時代を振り返り、その間の出会いや別れを誠実に、心をこめて書きつづけた」といえる。本書には、その子供時代の出来事をテーマにした作品が多く収録されているようだ。代表作のひとつ「世の中へ」では、能登を出奔し、京都の叔父のところで生活し始め、そこで思春期を経てやがて身体的にも精神的にも成長していく主人公の様子が綿密に描かれる。また、その続編にあたるような「迷児」には、京都に滞在していたある日、自分ひとりで街に出てしまい迷子になったことが書かれている。誰にでも子供時代に迷子になった経験はあろう。末尾の一節はとても印象的な文章となっている。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
人が生涯に一つだけ書けるような,
By 小谷野敦 (東京都杉並区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 世の中へ・乳の匂い 加能作次郎作品集 (講談社文芸文庫) (文庫)
その当時は、加能作次郎はある程度知られた作家だったが、その後忘れられた。だが、これを読めば、人は誰でも生涯に一編の傑作を書けるという、私小説の名作が、表題作の少なくとも二編が、それに当たることが分かる。特に「乳の匂い」は、おじの妾で子供を産んだばかりの女と一緒に、若者(つまり作者)が歩いていて目にゴミが入り、女が唾でとろうとするのだがとれず、乳を噴出して目にかけてとるという、何ともエロティックな小説である。
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