異文化コミュニケーションが叫ばれる中、国際交流というレベルだけでなく、普通の市井の会話においても妥当する方策の紹介。
この本の価値を一言で述べるとするならば、対話「術」というより、対話「原則」、対話する際に念頭に置くべき事柄を事例と共に列挙することで、
応用範囲を広げていることであろう。しかし「術」も豊富に紹介されているので、原則とその具体的使用例を勉強できる点が素晴らしいと思う。
著者の主張は以下のようである。
対話とは、相手を攻撃するのではなく、相手を認めることを前提とし、互いに歩み寄りを目指すコミュニケーション
■伝えるさいの3原則
1 相手のことはわからない
2 わからないから対話する
3 自分の身の安全をはかる
なるほど、と思った点を以下にまとめる。
・無理してしゃべりすぎることはない
例:拒否する際に「No」と日本人ビジネスマンが言うが、これは実はきつい言い方。
・日本人が奥手なのは教育に問題
策:重要問題だけではなく、どうでもいいような問題に関しても意見を言えるように教えること。
・いつから意見を言わせる教育をするか
答:最初から。知識や理解がなくてもよい。しかしそうすると陳腐な意見の羅列になるかもしれないから、自分が知らない価値に対する畏れを持つように。
谷崎『文章読本』「感覚というものは、一定の練磨を経た後には、各人が同一の対象に対して同様に感じるように作られている」。
・相手の文化まで身につける必要はない
例:フィンランドでは墓場でデートすることをためらわない。
・理念と現実を峻別する
理念は理念として、事実ではないことを認識して使うなら、説得力を増す。
・正義の異なるものが歩み寄るには
価値観、発想、主張で双方の意見をレベル分けし、意見の異なるレベルでの妥協点を探る。
・互いの共通点を探る。
例:山を登ると気温が下がる派、上がる派の対立。しかし温度が変わる、という点に関しては共通。
・相手が対話してこない場合。
相手がどのような姿勢であれ、自分は語るべきことをかたり、共通点を認め、歩み寄ろうとするのが対話の精神。
・相対主義は危険
「みんな正しい」というのは、意見の正しさを判定する神様のポジションにいわば自分を置いていることになる。
・フィンランドの対話型問題解決教育
問題を解決したストーリーを聞かせて、問題と解決策を定義させ、次いで「なぜ」を発し分析。次いで解決策を評価し、それに基づいて代替案を考える。
・悪意の対話者の効用
国旗に対する盲目的な信仰を抱いている生徒たちに対し、なぜ、なぜと疑問をなげかけ、ついには、美しい国旗なら少しずつ切り分けてみんなで持った方が良いとする先生の発案に子どもたちが乗っていく。日ごろから自分の信念について思考しておくべき。
・教養のある人は「絶対・・・」とは言わない。しかし自分の内で絶対の規準は持っておくのだが。