「麻薬密売人は咎められるべきではない」「吝嗇家は間違っていない」「悪徳警察官は正しい」といった内容をリバタリアニズムの観点から捉えてみた本である.ホットなところでいえば,大震災において「寄付を会社で募る」「経済活動は自粛しないほうがいい」ことの是非についても議論が深まるだろう.リバタリアニズムの良い紹介本といえるが,”Aではない,よってBである”というような1か0かの極端な著述が多く,反論の考察があまりないため,敢えて擁護しているとはいえ,リバタリアニズムの賛同者を増やすとは言い難いように思える.ハイエクがいうように「まいったな,あんたが正しいよ」と本当に思う人は稀であろう.”マジメに”議論したければ,冒頭でも触れられているマイケル・サンデルの本の方が良い.
ハードカバー版にあるかどうかは不明だが,訳者,橘玲が冒頭の「はじめてのリバタリアニズム」で全体をざっと解説している.彼の自己啓発本を読んで敬遠する人がいるかもしれないが,非常によくまとまっており,これだけでも値段分の価値はあると思える.また本編自体は70年代のもので訳者が現代風に脚色しているが,大筋で内容が変わるところは無いと思われる.