棋士シリーズ第三弾ということで米長さんが書いた「不運のすすめ」を読んだ。羽生さんの「決断力」、谷川さんの「集中力」は現役の棋士が書いた本だが、この「不運のすすめ」は現役を引退した立場で、米長さんが自分の棋士人生を振り返りながらその経験から得られた教訓を素直に書いている。一世を風靡した人にも関わらず、文体にはまったく嫌みなところや偉そうなところがなく、とても好感が持てる。内容としては、人生には、人間がいくら頑張っても抗することができない運・不運の波があるのだということをどこか達観した感じで書いている。しかし、それであきらめろというのではなく、努力することで不運の程度や期間を減らすことはできるし、また、幸運な程度や期間を増やすことができるとしている。そして、不運のときというのは、これから昇り調子になるという意味でチャンスであり、ポジティブシンキングで攻めるべき、逆に、幸運の時はこれから下がり調子になるのだから、慢心せずにきちんと精進すべきと述べている。羽生さん、谷川さんは、どちらかというと努力次第で何とかなるというトーンなのだが、それに「運」という要素を加えている点で年長者の経験の深さを実感した次第。棋士シリーズは三冊ともハズレがなかった。