Amazon内容紹介欄には言及されていないが、本書は日経新聞で著者が連載したコラム(『経済論壇から』)を収載したものである。ここから窺い知れるが、一トピックにつき3頁強しか割かれていないため、新聞のコラムとして読むには良いとしても一冊の単行本として読むにはあまりにも物足りない。
また、Amazon内容紹介欄には「ゲーム理論の眼鏡をかければ、意外に不自由な日本経済の知られざる論点・解決策が見えてくる!」とあるし、帯にも「ゲーム理論で読み解く現代日本」とあるが、本書では同理論がどういうものかに言及するくだりはあっても、それを持って諸問題が「読み解かれる」ことはない。私自身はこの宣伝文句に惹かれて購入したので、期待外れ感極まりなかった。
それでも中程度の評価とするのは、一つ一つのコラムに表れる筆者の考えや姿勢が至極真っ当であり、また読者に投げかけるメッセージも大変質が高いと感じたから。取り扱われているトピックには、障害者問題、農業自給率問題、医療崩壊問題と幅広く、一読に値するコラムも少なくない。
著者の主張の一つに、慣習・慣行やモラルといった社会的要素も実態経済と相互に影響を及ぼし合っており(著者はこれら社会規範を「経済規範」と呼ぶ)、これら経済規範をも視野に入れた分析が重要、というものがある。市場競争の激化がモラル低下を招いたという批判もあるが、公共心の低下が市場の反乱を招いたのかもしれない。不況の度に市場を槍玉に挙げるのではなく、また小手先の改革論に右往左往するのではなく、我々が辿ってきた道や足元を見つめ、広い視野でどのような社会を築きたいかから考えるべきではないか。その上で、もはや私達は市場なくして生活を営むことはできないことを思い出し、適切な市場との付き合い方を考えるべきではないかという著者の意見は、メディアで飛び交う派手な議論よりも重みがある。