原著は31年刊で、著者はホタルなど発光生物が専門の学者です。内容は自然に発生するといういろいろな火の伝説について科学的な説明ができるか試みたものです。伝説だから狐火(狐が口から火を吹く)は、大蛤が蜃気楼を噴出すと同様単なる想像で現実にはないことだで片付けてよさそうなのに、そのように見える場合があるのではないかというところまで考察しています。八代海、有明海に出る不知火は著者が文献や絵画だけでなく現象を観察できた唯一のものだが、正体を明確にしています。その他、火柱、蓑火、猫の眼の炎、女髪の火、セント・エルモの火、火の玉をとりあげていますが、説明できていると思います。割り切れないのが鬼火、特に人魂です。私はどちらも見たことがありませんが、あるとしても死体に由来する燐元素が燃えているのだと安心していましたが、これがとんでもない誤解であることが解説されています。といってガス、流星、生物などをもってきても人魂などの基本的性質に合致しないのです。このため著者は文献・絵画、体験談に現れるこれらも想像/創造の産物または思い込みとする考えに傾いていきますが、正確な観察例の蓄積が必要とも書いています。これらに取り殺されたという談はききません。もし、でくわした場合は、落ち着いてケータイで動画を撮る一方で日時、天候、場所、高度、現象継続時間、熱・臭いの有無、色、数、大きさ、固体・気体の別など克明に記録し開示すべきでしょう。これらを人の霊に結びつける考えも深層心理的には根強いと思いますが、臨終者のいる家から発光体が出たという談はありふれているのに重体の傷病人を看護する家族、看護婦さんなどがその人から発光体が飛び出すのを見たという談はなくこれはどうやら無理のようですが。巻末に怪火を含む全国幽霊・妖怪マップがついていますが、正体考究など思いもよらずこれらを素直に信じていた方が幸せなような気がしてきます。