本書より引用
ケインズは、不況が起こる原因をどこに見ていたのでしょうか。
「人々には、何も買いたいものがなくてもとりあえずおカネを持っておこうとする性質がある」― これです。
この性質のことを、ケインズは「流動性選好」と呼びました。・・・
ケインズ理論が登場する前の経済学の世界では・・・おカネを持つのは何か買いたいものがあるからであって、
それでなければ利子をかせぐために誰かに貸すはずだと考えられていました。
本当にそうだとすれば、売れ残りや失業があっても、じきに解消されていくことになります。
流動性選好
おカネのまま自分で持っておこうとする・・・すると、
おカネを貸そうとする力は十分ではなくなり、利子率の動きは、たいして下がらないうちに止まってしまいます。
そのため、設備投資や、車とかマイホームなどの需要は十分には起こってきません。
結局、総需要が不足したまま事態が落ち着いて、大量の失業者が残ってしまう。
流動性選好 ⇒ 貨幣のバブル
デフレ・・・本来利子がないはずの貨幣から、物価が下落する分、実質的な収益が得られることになる・・・
何もしないで持っているだけで。だから、支出を抑えておカネを持とうとし、
その結果またモノが売れなくて予想通りデフレになる。ここにはまり込むと、どんどんデフレが進行していきます。
バブルのとき人々が株や土地を追い求めてバブルを再生産したように、
デフレのとき人々はおカネを追い求めてデフレを再生産するわけです。
日本銀行
働く庶民にひどい犠牲を強いて・・・おカネを・・・もっと出すべきだったのに出さなかった
・・・それでインフレを芽のうちにつむことでお金持ちの資産を守り、
景気拡大をセーブすることで失業者がいる状態をキープし、
いつでも企業が人手を取り替えられるようにして賃金を抑え・・・『不況は人災です!』
私たちは不況の原因を、現代のケインズ理論を用いて突き止めました。
それは「流動性選好」、つまり、何も買うものがなくても人々がおカネをほしがることでした。
これが分かれば、不況を克服するためにとるべき政策の本質が分かります。
なるべくおカネの魅力を減らして、人々があまり持ちたがらないようにすればいいわけです。
・・・中央銀行が無からおカネを作って世の中にどんどん出していくべきことを主張しているのです。
中央銀行が、マイルドなインフレ目標を立てて、それが実現するまで金融緩和を続けることを約束する政策は、
まさにこの発想から提案されているものです。おカネを手元に残しておくことのメリットを減らして、
いまモノを買うのに使った方がマシにさせるのです。
つまり、人々がデフレを予想したときの悪循環を逆まわしにさせるわけです。
将来物価が上がると予想されるならば、モノを買うのを先送りすると損です。安い今のうちに買っておいた方がいい。
しかも、借金して今買っておけば、将来の収入はインフレによって増えるので、借金を返すのは楽になります。
こうしてモノへの需要が増えて、その結果、予想通り物価が上がるというわけです。
このような、再びマイルドなインフレにしようという脱デフレ志向は「リフレ論」と呼ばれますが、
ただ単にインフレによって景気を好くしようとするだけなら、昔のケインジアンも言っていたことだと思います。
でも、たいていそういう議論は、名目賃金はゆっくりとしか変わらないことを見越して、
総需要を増やして物価を上げることで実質賃金を下げようという「たくらみ」だったと思います。
つまり、人件費に比べて売値が上がるということですから、利潤が増えて会社はもうかってウッシッシ。・・・
現代のデフレ論が言っているのは、実質賃金を切り下げるためのそんな陰謀ではありません。・・・
賃金と物価の割合を変えるのが目的なのではなくて、現在の物価と将来の物価の割合を変えるのが目的なのです。
したがって、操作すべきは目の前の物価ではなく、将来に対する人々の予想なのです。
私が提唱したいことの柱
人々の頭の中にインフレ予想が定着するように、
日銀が具体的なインフレ目標値を約束して、大幅な金融緩和を行うこと。
そして必要ならば、当面そうやって日銀が無から作ったおカネを原資にして、
政府支出を拡大して総需要を増やしてやることです。
金融緩和以外の景気回復策
所得から消費を引いたのが貯蓄ですから、所得税を増税して消費税を減税することは、
貯蓄に課税することを意味します。おカネを貯めると損になるわけで、使った方がトクになります。