本書はケインズ「一般理論」をなぞるとともに、新古典派と対比させ、ケインズの不十分性を指摘するとともに、ケインズ理論と新古典派の理論が90年代後半から2000年代の日本の不況をどう説明するかを、ケインズの視点に立脚して明らかにしています。
秀逸なのは通常「一般理論」の把握で無視されがちな第17章に着目し、理論的分析ツールに仕上げていることです。この点は本書第5章で展開される流動性プレミアム(貨幣を保存したいと思う性向)と消費の利子率(消費財が腐朽するコスト)から、興味深い不況の動学の分析を加えている点に活かされています。
総じて投資量よりも消費量にポイントを置いた分析です。
ただし、国債累積残高や大幅財政赤字が消費を収縮させる効果(財政赤字⇒将来の税負担増・消費減少⇒現在貯蓄増大・消費減少)のルートや、所得再分配効果(税負担者への増税⇒国債保有者の所得増)のルートの観点は、すっぽり抜け落ちています。