大変面白いストーリーだけに、まあこれは山崎作品全般にいえることだが、もう少し主人公を生々しく表現してほしかった。
あまりにも理想的すぎる人格の設定なので。
唯一人間臭く感じたのは、妻にも恋人にも仕事の話に全く立ち入りさせないことぐらいか。
自分を支えてくれる大切な人だから、たまには苦しい胸中を吐露してもよかったはず。お互いの為にも。
それをさせなかったのは軍人だからか。
あまりに仕事に没頭するあまり家庭を顧みなかったのは、その辺の事情とリンクする。
それ故に最後まで息子は心を開かず、作者の仕事人間に対するささやかな批判が読み取れる。
最後に辞任するのはさすがにちょっと理想的すぎるかな。
ロートル社長を辞めさせてまで会社の改革をしたいんなら、壱岐正は絶対に必要不可欠だろうに。
「これからは組織の時代です」
結局作者が言いたかったのはこのことなのかな。
その通りだが、それなら信頼する部下に対しての人材育成の場面をもっと描写してほしかった。
組織=人材だから。
しかしながら、戦争の悪、それを推進した軍部(軍人)、その十字架を背負った第二の人生を元軍人の視点から描くあたりに
ただただ作者の多大な才能に怖れを抱くばかりである。
この物語は「反戦思想」に貫かれてると思うが、秋津の兄のキャラクター設定がそれを大きく担っているのは見逃せない。