小川三夫氏は宮大工。かの有名な西岡常一棟梁の元で修業し、現在は「鵤工舎」という工人集団を設立して、後進の宮大工を育てることもしている。鵤工舎で新入りがまず任されるのは掃除と食事だ。小川氏は「掃除をさせたら、その子の性格がわかる」というのである。また、「食事をつくらせたら段取りのよし悪しがわかる」とも。
修業は、時間をかけて身体に技が染み込むまで続けられる。宮大工の造る建物は長く後世に残るものが多いが、規格化されたものを組み合わせるのではなく、ばらばらの「不揃い」のものを組み上げて造るのだ。その考えは人材育成にもつながっている。鵤工舎の若者たちが「不揃いの木」のようでありながら、それぞれの個性を引き出されて成長していくのが本書からわかる。この本に書かれているのは小川流の宮大工の育て方であり、普遍性をもった教育論でもあるのだ。