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不愉快な現実  中国の大国化、米国の戦略転換 (講談社現代新書)
 
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不愉快な現実  中国の大国化、米国の戦略転換 (講談社現代新書) [新書]

孫崎 享
5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容説明

経済面では国際的影響力を徐々に低下させ、外交的には基地問題、領土問題などで袋小路に入り込む。そうした状況に背を向けるかのように内向きな言説が幅を利かせているのがいまの日本。その間にも我が国を取り巻く東アジアの状況は激変している。しかも我々の望まない方向に。中国の大国化、それに対抗する米国の戦略転換、その中で生き残りを図る周辺各国。日本の未来はこの「不愉快な現実」を直視することからしか開けない! 世界のインテリジェンス、安全保障を知悉する著者渾身の一冊。

内容(「BOOK」データベースより)

東アジアのハーフバランスの激変で、孤立化が進行している。

登録情報

  • 新書: 280ページ
  • 出版社: 講談社 (2012/3/16)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4062881497
  • ISBN-13: 978-4062881494
  • 発売日: 2012/3/16
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.6 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
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40 人中、34人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By kg
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著者は、次のように述べる。

1 中国は、2020年までにGDPで米国を追い抜き世界一になる。その時、中国の軍事力は、日本の10倍以上になっている。日本は、中国が米国と肩を並べる大国となることを認識しなければならない。

2 米国は、冷戦時代のように日本を重要視していない。日本より米国が重要視するのは中国である。日本が米国に従属していれば自国の繁栄があると考えるなら、時代錯誤であり国益を大きく損なうことになる。

3 米国は1980年代後半から90年代の前半にかけ、日本(日本の経済力)を最大の脅威とみなしていた。そこで、米国は日本に対し工作活動を行っていった。その一つが、BIS規制による日本の銀行の追い落としである。その後、日本経済は凋落して行く。

4 米国は、台頭する中国に対し、日本を利用し対抗しようとしている。しかし、日本自身が、日米同盟で、中国と軍事的に対抗できると考えるなら大きな誤りである。東アジアの日米の軍事力と中国の軍事力を比較すれば、中国の方が圧倒的に優るからである。また、米国は自国を他国(中国)からの核攻撃の危険に晒してまで、他国(日本)を守ろうとはしない。核の傘は、実は中国に対して無効なのである。

5 日本の三つの領土問題、中国との尖閣諸島、韓国との竹島、ロシアとの千島・国後・択捉の問題は、歴史的経緯を踏まえると日本に属する領土とは言えない。また、領土問題は、武力衝突につながる可能性がある。それゆえ、例えば中国との尖閣諸島問題は、これまで「棚上げ」とされて来たが、実はそれが日本にとって非常に望ましい状態である。日本は領土問題では、相手国と、武力不行使と話し合いを原則とし、貿易等で緊密な関係を築いていく、国益を失わない姿勢が必要である。

6 ある国民が、自国の事に関心が強く一方で他国の事に関心が薄い時、他国と対立が起きやすい。日本人は、この傾向が強く、それゆえ、日本人は攻撃的な国民性であると言える。もっと、日本人は、他国のこと知ろうとすべきでる。それが他国と良い交渉をする為に必要である。

7 日本は、中国は米国と肩を並べる大国となることを認識しなければならない。そして、日本の繁栄の中核が東アジアにあることを知らなくてはならない。出来れば、東アジア共同体を構築すべきである。
 しかし、米国は、それを脅威とみなし阻もうとするだろう。そして、日本には、政治家、官僚、大企業、マスコミに米国従属のシステムが出来上がっている。
 それゆえ、米国従属からの脱出も、東アジア共同体の実現も極めて困難だろう。だが、私たちは少しずつでも、日本の未来の為に歩を進めなくてはならない。

以上、本書のあらましを紹介した。

本書は、一人でも多くの日本人が読むべき、日本の、貴重な戦略本である。
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32 人中、24人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 閑居人 トップ100レビュアー
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2011年夏の日米学生会議で講演した著者は、「日米関係」をテーマに学生達に幾つかの質問をした。日本の学生達は「緊密な日米関係こそ肝要」と答えた。しかし、アメリカの学生達は概ね「オフショア・バランシング」を選択したのである。著者は、ここに端的に現在の日米関係が投影されていると考える。
「オフショア・バランシング」とは、ネオリアリズムの立場に立つウォルツやミアシャイマーの用語で、「過度に介入せず限定的なバランシング(直接均衡)をはかる」という戦略である。第一次、第二次大戦の初期の段階で、ドイツに対抗するイギリスにアメリカは武器援助をしたが、直接戦闘には加わらなかった。同様に、脅威と化した中国に対して、まず日本に牽制させ、状況によって「日米同盟」を強力にも非力にも機能させる。アメリカの国益に立てば、合理的な選択肢となる。
著者は、「150年間、日本人の国際認識の前提であった福沢諭吉の「脱亜論」の見直しから始めなければならない」という。中国や韓国がまともな国家に成長することがあり得ないと思えた時期は過ぎ去って、2020年には、中国のGDPはアメリカを追い越すだろう。一人あたりGDPがアメリカの四分の一程度、例えばメキシコであるが、中国がそのレベルになれば、人口13億の中国は、人口3億のアメリカを追い越すことになる。中国が、世界経済一位の国家になることは、もはや現実の問題だと著者は指摘する。
その場合に、日本が置かれた国際的環境は、大きく変化する。現在でも、アメリカはアジアで中国を第一の優先順位で見ているが、その傾向は更に歴然としていくだろう。海外の政治家から見て日本の政治家は国際政治の現実を語るに値にしない。「日米関係が万全なら安心だ」という常識が過去のものになった「不愉快な現実」をしっかりと見据えなければならない。
著者が様々な観点から語る日本を取り巻く外交環境についての指摘は、一つ一つが有益なものだ。これまでの著者の書いた本は全てそうであったが、国際政治の現実について、日本人として、決して望ましくはないが見据えなければならないことが直言されている。その意味で、日本の現在と世界の未来を考えていくときに、著者との対話・討論は有意義である。

評者は、しかし、著者の論考に疑問もある。例えば、「領土問題」を論ずるのに、著者は、ロシア、韓国、中国の言い分も十分に検討しなければと、相手国の論拠を紹介する。通常の論者は、日本側の主張と併せて論ずるのであるが、著者は「中国は国連憲章を遵守する国家である。軍事的に勝てない日本は紛争を避け続けていくことが賢明な政策だ」と主張する。孫崎氏は、尖閣、竹島、北方四島の領土問題に日本の正当性はない、と主張しているように見える。この孫崎氏の明らかな「誘導」にはどんな動機があるのか。(「後書き」は相当に嘘くさい印象を与えていることを承知なのか)。著者はまた、「東アジア共同体構想」も単に否定するだけではなく、「EU」成立のプロセスも参考に検討していくべきだと説く。多分、これらの主張には、厳しい異論が続出することだろう。
「不愉快な現実」の分析そのものについては、同意できるところも多い。しかし、その解決策については、孫崎氏の主張からは、何が正しく正当であるとするのかという「日本の国家意志」が見えてこない。一時的に経済的軍事的に不利であったとしても、多くの国家が英知と明確な国民の意志によって難局を乗り越えてきている歴史を無視してはならない。著者の外務省情報分析官としての仕事に敬意を払いたいが、本書において著者への不審の念は禁じ得ない。この問題には、国民一人一人の「激論」が必要なのではないか。
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By Lisa
本書は、中国の大国化やそれに応じた米国の戦略転換について、データを挙げながら提示するところから始まる。米国は自らの国益の観点から、むしろ経済大国化する中国を重視し、日本の安全保障には積極的には関与しない可能性が高いという指摘は、薄々予想されるものではあるが、多くの日本人にはショッキングであろう。その上で、日本人はこの「不愉快な現実」に向き合って、戦略的に外交を展開すべきであるとする。こうした指摘は、本書以外のデータでも確認できることであり、おおよそ的確であると考える。続いて、筆者は、日本においては、相手の関心や力を十分考慮せずにもっぱら自らの観点から主張がなされ、政策が展開されているとする。筆者の論にしたがえば、全く「戦略的ではない」ということになる。こうした夜郎自大ともとれる傾向は、近年海外で苦戦を強いられることの多い日本の産業・企業の競争力についてもしばしば見かけるものであり、首肯できる。

さて、では日本はどうすればいいのか?本書では、初歩的なゲーム論や経営戦略論の知見をもとに、方向性を提示している。すなわち、日本は従来のように自らの希望的観測や主張にこだわるのではなく、中国をはじめとする他国の主張や関心を理解して互恵的な関係を築くことで問題解決を図り、相互利益(とりわけ経済的な相互利益)に結び付けるべきであると。とくに、大きな国際紛争の火種となりかねない、北方領土、尖閣、竹島といった領土問題や北朝鮮への対応について相手に配慮すべきとの提案がなされ、以上の方向性が強調される。その上で、必ずしも日本の安全保障に寄与してくれるとは限らず、経済的関係も薄れてきているアメリカではなく、日本との経済的関係が大きくなっている中国を含むアジア諸国と互恵的関係を築いていくべきだとする。

評者は現状分析に関しては首肯すべき点もあると感じたものの、残念ながら本書の提示する以上の方向性にはほとんど同意できなかった。理由は2つある。まず、本書の強調する経済面での互恵的な「複合的相互依存関係」は理論的にも歴史的にもきわめて空疎であるため。次に、恣意的ともとれる相手国の主張や立場の強調など、事実関係の記述の荒らさが顕著であるため。知的なエッセンスや情報は要所に盛り込んであるものの、どれもつまみ食いの感が強く、上の2点のどちらをとっても、とても十分に知的鍛錬を重ねた内容であるとは言い難い。

筆者は、ゲーム論を援用して、相手国の主張や立場を織り込んだ戦略により、中国などの周辺国と互恵的関係を築けるという。これは、本書の主張に都合のいいようにゲーム論の知見を濫用しているに過ぎない。ゲーム論では、抜け駆けをしない仕組み(例えば仕返し)が存在したり、協調すれば相互利益になることが明確に情報として共有され、相互に裏切らないという信頼関係ができて、はじめて実りある協調関係が構築されることが示されている。つまり、ある種の信頼がなければウィン‐ウィンとなる複合的相互依存関係は構築しようがないのだ。

にもかかわらず、筆者は民主主義等の価値観の共有という相互信頼の基盤よりも、経済的な得失が重要であるとする。個人的な信頼関係は当然成り立つだろうが、中国などの国や社会に対する信頼はどうか(試しに家族で中国などに移住して運命を託しても構わないと思えるか自問してみればいいかもしれない)。十分に常識や価値観を共有していない相手と信頼関係を築くのは至難の技だが、それなくして複合的相互依存関係など築きようがないだろう。しかも、それぞれ国益を追求している国家はときに軍事力をともなって相互に抜け駆けするインセンティブを十分に持っている。ゲーム論的思考で戦略的に行動しても、相互に十分に信頼関係を築くことが難しい国家同士が、互恵的な「複合的相互依存関係」を構築できる可能性きわめて低いだろう。例えば、北朝鮮に関しては生存を保障するよう経済的に協力すべきとする主張は現実に裏切られ続けているが、当然なのである。本書は以上の点できわめて楽観的な前提の上でしか成り立たない戦略を推奨していると言っていい。だが、責任ある政策主体であれば、こうした互恵的関係が成り立たない場合を前提にして最善の戦略(ゲーム論でいうミニマックス解)を構想しなければならないのではないか。

関連して本書で一番致命的なのは、経済的な相互依存関係による互恵的関係は、国家間の対立の抑止に十分貢献することは滅多になかったという歴史的事実。戦前の日本と経済的依存関係が最も高かったのは、どこか?米国と中国である。また、ドイツはイギリスやフランスときわめて経済的相互依存関係が高かった。だが、第二次世界大戦はこうした国々の間で起きている。国家間の対立には資源獲得やナショナリズムなどのさまざまな要素が絡んでおり、経済的相互依存関係はそのなかでせいぜい抑止力程度の効果しかないというのが歴史の示すところ。こんなことは、米国や欧州の知的社会であれば常識と言っていい。本書のような立場は、数ある立場の中で理想主義的なリベラルという一つの範疇にすぎず、しかも影響力はきわめて限定されている。

最後に、本書では、互恵的関係を重視するためか随所で「本書にとって不都合な」事実関係や動向についての情報が恣意的に選別されていることを、改めて強調したい。例えば、日中間では日本が中国に経済的に依存している程度が相当高いものの、中国にとっては日本は数ある交易国一つに過ぎない。こうした事実には一切触れられていないが、この非対称性を考えただけでも経済的な互恵的関係は成り立ちそうにないことは明らかだろう。仮に日本が秋波を送り相手を一方的に信じようとしても。また、領海・領土の厳密な確定は近代以降(明治期以降)のものであるから、日本はそれを主張の前面に押し出している。にもかかわらず、こうした近代以降の領海・領土確定の経緯については一切触れず、一方的に日本側の問題を指摘するが、これはかなり議論の分かれるところであろう。北方領土、竹島、尖閣全てについて、多くの専門家から異論が続出する恣意的な内容と言っていい。

本書はこの種の意見を知る上で一読には値するとは思われるが、以上の点で理想的かつ一面的に過ぎ、政策の指針には全くなりえないと考える。この種の一面的な思考によって外交が引きづられるとすれば、そのこと自体に日本の危機はある。
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